客先に最近、つなぎ飼い牛舎から放し飼い牛舎に変えた牧場がある。

1ヶ月の内に相次いで2頭がいじめに遭い死亡した。

他の強い複数の牛達にいじめ殺されたのだ。

もともと大人しい臆病な動物である牛だが、環境が変わると本性がむき出しになる牛がいた結果だと思える。(これも牛の社会なのだ)


つながれている時はわが場所が確保できているから、牛同士の強弱関係に摩擦はない。せいぜい隣の弱い牛の餌を横取りするくらいだ。

しかし、一旦、フリーになると大体2時間くらいで牛の社会の上下関係がはっきりするが、従順さを示す態度の取り方わからない牛や要領の悪い牛、もともと性格が弱い牛などは、ボス牛に目をつけられいじめに遭うのだ。

女同士だから、いや、雌同士だから余計にたちが悪い。(失礼)

しかも、集団リンチなのだ。


改めて本を読むと(伊藤紘一著「ふたたび酪農」)、人間社会でも同じだが、牛の社会でも同じで、おちょこちょいのお先棒かつぎのリーダー牛がいて、ボス牛に気に入るような行動を取る。ボスは動かないが、リーダーが動くとその次に強いのが集団動物であるが故に後に続くから、集団リンチのようなことになる。



牧場の牛の場合はこれに、人間が加わる集団となるから、牧場主は牛の上に立つ立場でないとコントロールが出来ないことになる。(犬も同じ)

そして、大切な事は、弱い牛がよけて通れるだけのスペースや通路巾や設備が確保されていることで、例えば、強い牛が水を飲んでいる時に邪魔にならないように通れるかどうかだ。



それでなくても、強い牛はわざと餌や水を飲ませないようにしたり、とうせんぼしていやがらせをして自分を誇示する習性がある。



今回のケースは設備スペース的にはそれを確保する設計が出来ているので、これまで子牛のときから集団作法に慣れないままだったり、気をつけて弱い牛を隔離したやる配慮が足りなかった結果だと思われる。

 

酪農という科学は驚くばかりに研究が進んでいる。

しかし、その研究が実際の農場に適用できるような「産業技術」に昇華されなければ意味がないことになる。

上記の牛の習性の研究が設備に反映され、事故がないばかりか効率的な酪農経営につながるようにすることが必要なのだ。