参考に、口蹄疫にかかわる 新マニュアルを掲げておく。

口蹄疫
防疫措置実施マニュアル
平成22年6月24日22消安第2898号
農林水産省消 費・安全局長通知


平成22年4月20日以降、宮崎県において発生が確認されている口蹄疫に
ついては、家畜伝染病予防法及び口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針に基
づき防疫措置を講じているところであるが、万一、本病が発生した際、そのま
ん延防止を図るため、本マニュアルを作成し、本病の一層の防疫措置に資する
ものとする。

1 防疫措置の基本方針

本病の防疫対策は、本病の早期発見及び早期通報のための監視体制の強化を
を図るとともに、発生時においては迅速な殺処分及び埋却等によるまん延防止
対策を講じ、その被害を最小限にくい止めることが基本である。

2 異常家畜の発見の通報

(1)家畜防疫員は、家畜の所有者、獣医師等から異常家畜を発見した旨の通
報を受けた場合は、遅滞なく県畜産主務課(以下、「畜産課」という。)
に連絡し、畜産課は既に設置されている場合は国の口蹄疫対策本部(以下、
「対策本部」という。)に、設置されていない場合は農林水産省消費・安
全局動物衛生課(以下、「動物衛生課」という。)に連絡する。また、当
該通報に係る事項をあらかじめ定められた様式の調書に正確に記録し、緊
急的な措置について口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(以下、「防
疫指針」という。)に基づき通報者に指導等を行うとともに現地到着予定
時刻を連絡する。

(2)家畜防疫員は、原則通報から2時間以内に当該農場に到着する。家畜防
疫員は、現地到着後、車両を農場施設の外に置いて、防疫衣を着用し、現
地に携行した用具をもって施設内に入る。

(3)家畜防疫員は当該施設に入って直ちに、異常家畜及び同居家畜の鼻腔、
口唇、口腔、舌、蹄部、乳頭部等を中心とした臨床検査を徹底する。その
際、すべての異常家畜(異常家畜が多数の場合は代表的な数頭)の病変部
位をデジタルカメラで鮮明かつ十分に撮影すること。また、防疫指針に基
づき、適切に病性鑑定用材料を採取する。

(4)家畜防疫員は、最寄りの家畜保健衛生所から当該写真及び飼養状況や病
歴等の疫学情報(不明疾病の現地調査票等)を畜産課及び動物衛生課に電
子メールで直ちに送付すること。この場合においても、防疫指針に基づき
可及的速やかに動物衛生研究所に病性鑑定用材料を送付し、精密検査を依
頼する。

(5)動物衛生課は、送付された写真及び情報に基づき、また動物衛生研究所
及び必要に応じ専門家の意見を踏まえ、直ちに病性を判定する。本病であ
る可能性が極めて高く直ちに殺処分する必要があると判定した場合には、
直ちに畜産課にその旨を連絡する。なお、動物衛生課は政務三役及び関係
部署へ直ちに情報提供する。

(6)畜産課は当該連絡を受けたら、家畜保健衛生所を通じ農家及び市町村に
その旨を連絡する。

(7)対策本部は、直ちに職員を発生農場に派遣し、現場での防疫作業の円滑
化について調整を行うとともに、家畜防疫員と共同して必要な疫学情報等
の収集を行う。また、対策本部は、畜産課にその旨を通知し協議した上で、
獣医師の派遣、防疫資材や投光器の手配などを直ちに行い、24時間以内
の殺処分に必要な支援を行う。

(8)写真による判定が困難な場合は防疫指針に従いPCR等の病性鑑定を実
施し、その結果に基づき対応する。

(9)家畜防疫員は、病性が決定されるまでの間、異常家畜の所有者に対し、
防疫指針に基づき飼養家畜の隔離、関係者以外の農場への立入禁止、農場
の応急的な消毒等を指導し、病原体の散逸防止を図る。

3 発生確認後の発生農場及び周辺における防疫措置

畜産課は、異常家畜が疑似患畜と決定後、直ちに管轄家畜保健衛生所へ次
の措置を指示する。

(1)当該疑似患畜は、当該農場内で疑似患畜と判定後原則として24時間以
内に殺処分を終了する。なお、豚の殺処分においては電殺や炭酸ガスによ
る殺処分など効率の良い方法を検討する。

(2)迅速かつ効率的な殺処分を行うため、積極的に民間獣医師の有効な活用
を行う。また、獣医師以外の者であっても獣医師の指導の下で殺処分への
活用を図るものとする。

(3)埋却地は当該農場又は当該農場の周辺とし、疑似患畜と判定後72時間
以内に埋却を完了する。やむを得ない事情により、これらの埋却地を確保
できない場合には、公有地(国、県等)を利用する。この際、埋却地への
死亡畜の移動に際しては、動物衛生課と協議し、死体等を密閉すること等
による十分な病原体の拡散防止措置を講じる。

(4)殺処分及び埋却作業を行うに当たっては、

① 発生農場及び近隣農場の外周部をビニールシートで遮蔽すること等に
より、病原体の散逸を防止する。

② 消毒薬、殺鼠剤、殺虫剤等を的確かつ迅速に使用し、昆虫、小動物等
による病原体の拡散防止を徹底する。

③ 農場周辺の通行の制限を実施し、道路への消毒薬の散布(散水車の活
用を含む。)などにより、周辺の消毒を徹底する。

④ あらかじめ発生農場内に炭酸ソーダ等の消毒薬を散布すること等によ
り、粉じんの飛散を防止するとともに、防疫指針第2の3の(8)(防
疫従事者の入退場時及び退場後の留意点)に従い、発生農場からの病原
体の散逸防止に努める。

4 移動制限区域内で講じる防疫措置

(1)家畜防疫員は、移動制限区域内にある農場のリストアップを行うととも
に、発生農場から半径3km圏内にある農場に対して電話による聴き取り
等により、これらの農場における異常畜の有無を速やかに確認する。リス
トアップされた全ての農場に対し、農場の出入り口に踏み込み消毒槽を設
置するとともに、農場内に入る車両及び機材等についてはその入退場時に
消毒するように指導する

(2)畜産課は国と協力して、発生後直ちに、発生農場から半径1km圏内に
ある農場については抗原検査及び抗体検査を、移動制限区域内にある大型
肉用牛肥育農場及び大型養豚農場については臨床検査をそれぞれ実施し、
口蹄疫ウイルスの浸潤状況を調査する。

(3)畜産課は、複数の畜舎を有する農場に対して、畜舎間の家畜の移動の禁
止を徹底する。

5 その他

(1)道路等における消毒ポイントについては、本病の発生確認直後から、車
両等による病原体の拡散防止が徹底できるよう、路線等を確認の上、畜産
関係車両や防疫作業車両が消毒されるよう設置を工夫すること。特に、畜
産関係車両や防疫作業車両については、農場出入りの度に運転手及び車両
内部を含め厳重な消毒を徹底するとともに、併せて一般車両の消毒も実施
すること。

(2)移動制限区域内の農場において家畜を飼養する者及びその家族は外出及
び帰宅の際、その都度着替え並びに手指及び靴底等の消毒を徹底すること
とし、作業着及び作業靴での外出を禁止する。農場の従業員についても同
様とする。

(3)疫学調査を実施するに当たっては、
① 家畜防疫員は、発生の確認から21日前まで遡って実施すること
② 農場従業員の行動歴、宅配便等の入退場、農場への訪問者等を調査す
ること。特に農場への訪問者等については訪問前後の行動歴についても
調査すること

(4)移動制限区域内にある共同たい肥舎については、その利用をやめること

(5)病性鑑定について、国は現行のPCR検査に加えて簡易キットの実用化
を進める。

(6)疑似患畜の埋却が困難な場合に備え、国は移動式レンダリング車と焼却
炉との組合せによる焼却の実用化を進める。