NHKテレビで関東のホウレンソウ農家を紹介していた。
75歳の夫婦二人で、還暦過ぎて養蚕農家から転作してホウレンソウを
毎日出荷している農家である。
転作後は試行錯誤と苦労の連続だったが、大病をしたあと作業体系を一新。
毎日8時間労働を決め、年末年始などはまとまった休みを取り、時には
夫婦二人の温泉旅行も出来るような仕事のやり方に変えて余裕ができたし、
市場評価の高いホウレンソウを作ることもできるようになった。
今後も体が続く限り仕事を続けたいと言っておられた。
栽培管理データを活用し、毎日8時間の仕事で一定量の出荷できるよう
播種を「畝ごと」に調整管理しながら栽培するというものである。
決して裕福な収入ではないと思うが、仕事にゆとりと楽しみを持ちながら
生活できる、体ばかりでなく頭を使う仕事に転換したことに満足していて、
ご夫婦とも75歳とは思えない若々しさであった。
野菜農家以上に酪農家は3Kの仕事である。すべて搾乳を中心に動いていて、
年中無休、朝夕の搾乳が生活のリズムを決めている。
従って、「家庭でゆっくり過ごす時間」が削られている。
特に女性は家事と搾乳を両立させるため寝食を惜しんで働く、「ゆとり」
とは程遠い生活ではないかと思うのである。
かつてのこのホウレンソウ農家の方も同じであった。
しかし、播種を予め紐に仕込んでいる種に変え作業はその紐を張るだけ
に激減した。しかも、収穫する分だけの播種をすることで、播種も収穫
も1日の作業時間分を行ない8時間労働に成功したのである。
ロボット搾乳も「紐播種」と同じように、一番きつい搾乳作業を省力して、
酪農の仕事全体のゆとりのために頭を使おうというものである。
搾乳ロボットがもたらす時裕(時間の余裕)によって、今まで選択権の
なかった仕事に優先順位をつけ、付加価値を生む仕事に振り分けられること
が出来るようになる。
そして、もうひとつの「自由」。
酪農家の仕事の都合で我慢させられていた搾乳(子牛が乳を飲む時間)を、
牛は自分の意思で子乳を飲ませるを時間(搾乳)を獲得できるのである。
究極の「アニマルウエルフェアー」(動物福祉)のように思える。
酪農家は「時裕」を、牛は「自由」を獲得するためのロボットなのである。