私の音楽履歴をもう少し続けよう。

小学校での音楽体験は「大太鼓」と「バイオリン」。中学校ではもっぱら音楽鑑賞、

そして高校では実は、今の皇太子殿下がやっている「ビオラ」だった。

 

小学校の頃から私の家には父親が好きでピアノやアコーデオンがあって、楽器が

弾けなければ、歌声でよく合奏をしていた。

合唱をするときは、ハーモニーをつけるのは結構センスがあった弟や妹に任せ、

私は、長男風を吹かしてもっぱらリードテナーをやっていた。

なに、ハモルことができないからだが、弟や妹はそんな兄貴に優越感を持って、

結構楽しんでいたようだ。

 

中学校ではオーディションに落ちて(何度も言うが・・)、合奏や合唱の機会がなかった

から、いつか、チャンスがあればやってやろうと思っていた。


高校の二年生の春、音楽のK先生が今年の秋に弦楽合奏をやると言い出した。


skoroさんは、バイオリンをやっていたらしいけど、一緒にやってみない?」

しかし、実はこうこうで、中学校の時に・・・・、ともたもたしていると、

「ビオラを弾く人がいないのよ」

「ええっ!ビオラなんか触ったこともありませんが・・・」

「やってみなさいよ、できるわよ。楽器は学校にあるから、もって帰ってもいいわよ」

と、いとも簡単に「前向き先生」がのたまう。

 

しかし千載一隅のチャンス、やってみることにした。

第一譜面を見ると、バイオリンやピアノと違って、ヘ音記号で書かれている。

こりゃなんだ?!  というところから始まったから、秋の文化祭に向けて夏中、ギコギコ

やっていた。

のちに、音楽家になった六歳下の弟が、「あの夏はひどかった・・・」とおっしゃったが、

済んだことで、「そんなにひどかったか?」と、シャーシャーと答えたものの、内心は、

正しくそうであったろうと思う。
 

懸命な努力のお蔭で、何とか合奏できる状態になり、自分でも低音を担当する立場で

弾いていると、ゾクゾクっとするほど、すばらしいハーモニーやリズムを感じることができた。

 

発表の日になった。

ステージに上がる前に楽器の調音をしていると、なにか楽器がバシッと音がしたのだ。

なにか分らないままステージに上がり、K先生のタクトに合わせて、さっと弾き始めたら、

とんでもない音が出る。練習で何度もやった指の位置なのだが、狂った音が出ている。

大パニックになった。すぐ弾くのをやめて調音しなおしたがいくらやっても合わない。

その後は、冷や汗を流しながら、弾いているカッコウだけで音を出さずに一曲を終えた。

 

終わって後になって、原因が分った。

弦楽器はすべて、強い力で弦を張るから楽器がへこまないように、楽器の中に魂柱という

棒が立っていて支えているのだが、楽器が乾燥したり、なにかの弾みで支柱が傾いて

倒れることがある。私にとっては初めての経験であった。

いくら調弦で引っ張っても、ビオラの胴は、どんどんへこんで音は合わないわけだ。

借り物のビオラの魂柱は、私をあざ笑うかのように、カラカラと乾いた音でビオラの腹の中で、

踊っていた。

 

曲は、モーツアルトの弦楽合奏曲であったが題名は忘れた。

聞けば、「これだ」とこたえられるが、大変すばらしい曲であった。

聴衆の皆さんにちゃんとビオラの音の入った合奏を聞かせられなかったことは、誠に残念。

しかし、私自身は念願の合奏をやることができ、半年間も練習の中で、文字通り、音楽を、

そした、音を楽しんだひと夏だった。 以来、モーツアルトも好きにもなったのである。