参観コースの最後にある月波楼は池の西岸、古書院の北側にある茶屋で、杮葺きで寄棟造りの建物です。名前は白居易の西湖詩の「心一顆珠」(月は波心に点じひとつぶの珠)という句に由来しています。
 
その前に置かれたつくばい。丸い石の一部が切り取られたような形をしています。下の部分の小石は赤いものが集められコントラストが作られています。
 

 
隣の古書院を横から見たところ。左手奥に簀子で作られた月見台があり、池のほうに張り出しています。
 
 
月波楼の舟底天井。松琴亭が冬の茶屋、月波楼が夏の茶屋と呼ばれたのが分かるような涼やかな構造です。
 
 
板敷きの膳組所の下地窓。風通しが良くなります。
 
 
薄暗い部屋の中から外を見るとなぜか落ち着いた気分になります。
 
 
細長いつくばいでしょうか。手前の四角の飛び石の置き方も絶妙です。
 
 
古書院の元々の玄関にあたる御輿寄。沓脱石は六人分の沓を並べられたため「六つ沓脱」と呼ばれています。水はけのために真ん中が微妙に盛り上がっています。
手前の延段(敷石を組み合わせた敷石の道)は「真の延段」と呼ばれ、離宮内には他に行、草の延段と呼ばれるものがあります。
真・行・草は漢字の三書体に因んでいて格式の高い角ばった延段ということで「真の延段」と呼ばれているのでしょうか。
 
 
参考までにこちらが外腰掛近くの「行の延段」。
 
 
笑意軒の軒下の「草の延段」。真の延段とは違って、形の自由さと丸みが強調されています。
 
 
中門。その手前の延段は霰崩(あられくずし)と呼ばれる大きめの玉石をわざと粗く敷く手法を取っています。
 
 
池のほとりにある衝立の松(住吉の松)。庭の全景をあえて隠して見えないようにして期待を高める効果があるそうです。対岸は松琴亭。
高い生け垣もそれぞれの空間を隔てることで異なる景色の趣向を楽しめるように工夫して張り巡らされています。
 
 
御朱印ならぬ御所印?
 
 
これでようやく桂離宮の記事は終わります。ずいぶん推敲して記事5回分ですから、写真は百枚弱は撮ったかもしれません。
参観コースは20名ずつ時間帯で分かれて約80分歩きます。起伏はそんなに激しくありませんが、飛び石の上を歩いたりするので靴には気をつけたほうがいいですし、大きな荷物は事前に待合室のロッカーに預けたほうがいいです。
ところどころに細かい趣向が張り巡らされていて、庭園のほかに建物など見ながら歩くので退屈しません。敷石ひとつ採っても場所によって趣が異なりますし、気が遠くなりそうな手間がかけられている箇所もあります。何かテーマを決めて数回参観するとはっきり見えてくるものがありそうな気がします。
季節でも風景がずいぶん異なるようですが、予想通り春と秋はとても混雑するそうです。
 
桂離宮については外国人の絶賛がその評価を代表するように言われていますが、「外国人の桂離宮の評価をありがたがる風潮」を批判的に捉えた文章(坂口安吾、井上章一など)も書かれています。そういえば最近「外国人観光客が日本に来て感激!」みたいなネット記事がやたら目に付きますけど…うれしく無くは無いですけど、何かわざとらしさというか面映ゆいものを感じます。
外国人に評価されようがされまいが桂離宮の価値は普遍ですし、これからも大切に引き継いで保存されていかなければいけないものかと思います。