松本清張全集の第49巻の後半は「白と黒の革命」です。1979年のイランのパフラヴィー朝のパーレビ国王が失脚し、パリから帰国したホメイニ師らを中心とするイスラム教シーア派の法学者たちが政権を掌握したイラン革命についてのドキュメンタリー小説です。
(画像はパーレビ国王夫妻です)
 
主人公の物書きが、偶然イラン人の絨毯商人から
「イラン革命は石油値上げ路線に一方的に突走するシャー・パーレビの傲慢にアメリカの(石油)メジャーが懲罰を与えようとしたことから起こった」
と聞いたのに強い興味を抱き、真相を探るべく様々な関係者のツテを頼って東奔西走して、遂には革命直後の混乱したイランに入国して…という話です。ちょっとツテのたどり方が強引ですが、まぁそこは小説ということで…。

アメリカの言うことを聞かずに他国の権力者が失脚させられるパターンは実際あったようで、日本でも真偽はさておき田中角栄とロッキード事件が同じようなニュアンスの陰謀論で説かれることがありますね。
 
パフラヴィ―朝は1925年にコサック旅団の軍人だったレザー・ハーンによって創始された歴史の浅い王朝でした。シャー・パーレビはイランの近代化・世俗化を進めましたが、秘密警察(SAVAK)を利用して反体制勢力を弾圧し、欧米石油メジャーと対立して石油会社の国有化と石油価格の引き上げを強行して石油が国際政治で産油国側の「武器」になることに先鞭をつけて、その莫大な収益を一族で独占して厖大な資産を築きます。そりゃメジャーに煙たがられますね。
 
OPECを先導して原油を武器に傲慢にふるまうシャーを懲らしめるために、デモ隊をCIAが暴徒化させますがブレーキが利かなくなって王朝が倒壊してしまい、宗教勢力が主導する革命評議会がPLOの支援を受けて反動的な宗教国家を作ります。
後にフォード大統領時代のCIA長官だったジョージ・ブッシュもそうした工作の失敗を示唆するような発言をしています。
 
革命も国内事情だけでなく、複雑な国際関係の対立が絡んで動き出すことがよく分かります。