ふらっと映画を観に行ってきました
『Flow 』

主人公は1匹の黒い猫
そして動物たち
人間が存在したであろう形跡はありますが
登場人物に人間は出てきません
世界が大洪水に呑まれてゆき
住み慣れた家も
水中に消えていこうとしているなか
主人公の黒猫が
流れてきたボートに乗り込み
一緒に乗りあわせた他の動物たちと共に
旅に出る物語
監督・製作・編集・音楽を1人で手がけた
長編デビュー作「Away」で
世界的に注目されたラトビアのクリエイター
ギンツ・ジルバロディス監督が
5年の年月をかけて
多くのスタッフとともに完成させた
長編第2作目となった今作品は
2024年第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で
ワールドプレミア上映されて以降各地で絶賛され
2024年アヌシー国際アニメーション映画祭にて
審査員賞・観客賞を含む4部門を受賞
2025年・第82回ゴールデングローブ賞では
ラトビア映画史上初の受賞となる
アニメーション映画賞を
第52回アニー賞では
長編インディペンデント作品賞、脚本賞を受賞
第97回アカデミー賞でも
長編アニメーション賞を受賞しました
この作品の素晴らしいところは
人間が一人も登場しないので
「言葉」というセリフはひとつもなく
全て動物たちの鳴き声と
走り抜ける足音や状況に応じた適切な効果音
森や草木、空といった自然
そして
水の表現が巧みなところ
さらには鳴き声や唸り声など
言葉はなくても
きちんと彼らの意志疎通が伝わってくるのです
何に対して腹を立てているのか
何に興味があるのか
たまたま1艘のボートに乗り込んだ
様々な種類の動物たち
荒波に呑まれたり
帆柱が樹に引っ掛かり動けなくなったりと
想像を超える出来事や危機に襲われても
やがて動物たちの間には
少しずつ友情が芽生えはじめていきます
これを人で例えるなら
様々な人種が互いを尊重し友情や絆で
結ばれていくということに通ずるのでは❔
また
巨大な遺跡などが完全に水没すると
水中生物たちが生き生きと活動し
色とりどりの美しい魚が泳ぎ回ったり
クジラのような大きな魚が
度々黒猫のピンチを救ってくれたりもして
共存する様は
むしろ人間がいなくなった世界での方が
実現するのではないか、と感じました
「Flow 」には
氾濫、洪水、流れるという意味がありますが
巡る、通うという意味もあって
この作品にピッタリなタイトル

お互いの存在を認め合い
試練や困難を乗り越え紡がれる絆は
単に
優れたサバイバルストーリーなだけではなく
どんな国の言語も必要としない
世界で共有できるメッセージ性があり
アニメーションの美しさも相まって
この星(地球)の世界中の人たちが
彼らのようになれたなら
どんなに美しく愛おしく平和だろうと
思わずにはいられない
とても秀逸な作品でした
