
ドイツのファイト・ヘルマーが
監督・脚本を手がけた
山の谷間を行き来する2台のゴンドラで働く
2人の女性が織りなす物語を
セリフなしで描いたドイツ・ジョージア合作映画
『ゴンドラ』

小さな村の古いゴンドラで育まれる
女性同士の恋愛を
セリフを廃した監督得意のスタイルで描き
ポルトガル・アヴァンカ映画祭では
グランプリなどを受賞
東京国際映画祭のコンペ
LGBT部門などの60を超える映画祭に
招待された注目作です
ジョージア西部のコーカサスにある山間の村に
父の死をきっかけに帰郷した娘のイヴァは
残された生家に住みながら
唯一の公共機関であるゴンドラの乗務員として
働き始めます
職場の先輩女性ニノの親切な態度に触れ
イヴァは彼女に好意を持ち
やがて二人は愛情を深めていきますが
そんな二人に嫉妬した駅長が
何かと意地悪をしてくるものの
そんなことはもろともせず
すれ違うゴンドラを
遊び心満載で装飾し愉しむ様は
自由で明るくてワクワクします
セリフはありませんが
笑ったり
唸ったり
奇声をあげたりしますし
音楽も流れます
この作品の企画が始まった2021年には
ドイツではコロナ下で
映画製作が許可されなかったため
監督は7人という最小限のスタッフと共に
ジョージアに渡り撮影を決行
高感度で機動性のある
デジタルシネマカメラを使った
リモート作業や
地上とは距離が取れるゴンドラを使用し
俳優たちも発声しないなどの
三密に対応した撮影がなされたんですね
映画の主役のゴンドラは
ジョージア(旧グルジア)南部の
小コーカサス山脈の西にある
フロという小さな村に実在するもの
「ジョージアで最も長い距離をつなぐゴンドラ」
と言われ
途中の支柱がないために
風が強いとかなり横揺れして怖いらしいです
実は数年前に
ゴンドラの車体は
新しいものに変わってしまったため
あの味のある車体を映像に残せたのは
とても貴重で意義のあることでしたね
この作品の素敵なところは
女性や子供
障がいを持った方や高齢者など
立場の弱い人たちに光を当て
日々の暮らしに幸せを見出し
大らかに恋愛や性を楽しんだり
豊かな自然に育まれたユーモアや発想力を
遺憾なく発揮しているところです
高所恐怖症の人には
絶対に無理だとは思いますが
高いところが意外と好きな私としては
あのゴンドラに乗ってみたい