「野水さーん、終わりましたよー。」

パッ

と目を開けたら、
「おぉー、パッチリ目開いたねー」
「これからお部屋に戻るけど、目が回らないように(布。ガーゼ?)被せますからね」
と言われて柔らかな巾が目の上に乗せられました。
この時、まだ意識は朦朧としていたものの、
「はい、ありがとうございます。お願いします。」
と返事をし、ストレッチャーの上でしばらく揺られながら移動していく様子も、途中で看護師さんに
「気持ち悪くない?」と訊かれ「大丈夫です」と答えたのも覚えてはいるのですが、思考や感覚、脳と身体のバランスがとれていない違和感はものすごくありました。

部屋に着くと、母の
「あら、もう帰ってきた。」
と言う声が聞こえて、再び看護師さんに
「野水さん、ベッドに移りますけど二人がかりでやりますから(安心して)。少しだけ右に寄れますか?」

(私:もぞもぞ)

「はい、そんなに行かなくていいですよ。それじゃ、1、2の3!」

トスンッ

体の下に敷かれているシートごとベッドに移動。
ベッドの両サイドの転落防止柵をカシャンカシャンと上げている音、点滴のぶら下がっているキャスターがカラカラと動く音、看護師さんが話しかけ、「良かった、ありがとうございました。」と答える母の声、シュウゥ~~シュコォ~~という謎の音。

五感の中で、最初に感覚が戻ってきたのは聴覚でした。頭の中では(なるべく早く麻酔から覚醒しなくちゃ)との思考が働き、眠くてなかなか開けられない瞼を、何度もこじ開けては閉じを繰り返しながら、徐々に自分を取り戻して行きました。

右手をごそごそ動かし、さらに左手で右脇にドレーンの有無を確認。
無い!爆笑
無いということはリンパへの転移はなく、郭清されてないということ!!良かった~笑い泣きラブラブ


この日の天気予報では、これからさらに風が強まり夜には雨が降りだすと言っていたので、

「まだ動けないし、何もすることないからもう帰っていいよ」

と母に言い、叔父と共に早めの帰宅を促しました。

「そお?じゃあ、お大事に。」

(あ、さっきまでより、心なしか母の声音が高い。安心したみたい?)

そんなことを思いながらありがとうと答え、母たちが出て行く様子を耳で確認し微睡む中で、ようやく膝下に謎の音の正体があることに気付きました。

シュウゥ~~シュコォ~~、
 シュウゥ~~シュコォ~~、
   シュウゥ~~シュコォ~~、
 シュウゥ~~シュコォ~~


下肢の血栓予防のためのマッサージ器具が装着されていたんですねウインク