11:00頃、看護師さんが呼びにいらして、手術室までてくてくと歩いて行きました。
ここの病院は確か、4階と2階に手術室があって、私が向かっているのは2階のほう。
手術フロアのイメージは、ちょっと薄暗くて、手術中の患者さんの極少数の付添人が心配そうに終わるのを待っていて、衣擦れの音すら響いてしまうような重苦しい雰囲気ーーー
が、しかし

私の向かった2階は、診察を待つ人のいる極フツーのフロアだった

しかも人がいっぱいいる~

手術着を着て、看護師さんに先導され、てくてく歩いている私は注目の的



は、恥ずかしい……

皆さんの、心配してくださるような、同情してくださるような、何とも言えない表情がいたたまれず、途中から足早になって看護師さんを追い越しそうになりましたよ

ようやく扉を開けて中に入ると、先ずは手術をアシストするスタッフの皆さんとご挨拶。左手首のバーコードと本人確認を済ませたところに△△先生登場。
「昨日は眠れた?」
「はい、とっても
」


「全身麻酔怖くない?」
「今回で3度目なので全然平気です
」

「前は何で?」
「1度目は鼻の骨を折って
」

「(ちょっとニヤケてボクシングの構え)」
「…ケンカじゃないです…
」

「(失笑)」
「ところで先生、取り出した癌は見せてもらえるんですか?」
「えー、見たいの?」
「見てみたいです
」

「あれはね、取り出すと直ぐに病理にまわしちゃうから実物は見れない。デジカメでいいなら。」
「是非
ちなみにどんな色ですか?」

「茶色っぽいかな。」
「へぇ~
」

こんな会話をしながら手術台の上に上がり、上半身を脱いで横になると、左手の甲(私の場合は右胸を手術するので、邪魔にならないように左側の手でした)に点滴用の注射針を打たれます。
こういう痛いのは、全部麻酔が効いてからにしてくれたら良いのにな~と思っていると、口元に酸素吸入器をあてがわれ、
「それじゃあ野水さん、目を閉じてゆっくり深呼吸してください。まだこれは酸素ですから。」
「ハーイ(すーはーすーはー)」
「気分悪くないですか?」
「ハイ(すーはーすーはー)」
深呼吸して返事をしながら、実は私がやろうとしていたことは、麻酔で寝落ちする直前に、どんなことが起こるのかを知ること。
目を閉じているので聴覚に意識を集中させます。
「(すーはーすーはー)」
自分の呼吸音、まわりの方たちが色々な名前を言いながらチェックする声、そして一定のテンポで聞こえてくる[ピーピーピー]と言う音。
この機械音に注目

「野水さん、今から麻酔入りますよ。そのままリラックスして深呼吸を続けてくださいね。」
「ハーイ(すーはーすーはー)」
[ピーピーピー]
「
」

横になっているのに、“立っていられない”と瞬時に感じるような、頭がクラっとする感覚が右脳に走ります。
「(すーはーすーはー)」
[ピーピーぴぶぁ~んぶわ~んぶわぉ~ん]
「(あ、音が歪んで聴こえるんだ)」
ここからあとの記憶は、起こされるまで全くありませんでした。