「乳がんです」と告知されると、
患者さんの多くは動揺し
涙を流されるケースがほとんどのようで、
私のように
朗らかな反応をした患者は珍しかったらしくて、
先生のほうが動揺していました

「今から細かく説明していきますが、メモに書いて渡しますし、判らないことや聞きたいことがあれば、どんなことでも訊いてください。」
「ハイッ
」

「……(苦笑)」
「野水さんの乳癌は浸潤性(転移する可能性のある)乳管癌ですが、乳癌のなかでも3%くらいの割合しかない珍しいタイプの《ネンエキ癌》でした。」
「……(ニコニコ
)」

「……大丈夫ですか?」
「…?…ネンエキって?」
「粘液です」
「
」

“ネンエキ”と言われて、
咄嗟に“粘液”と変換できませんでした。
それくらいには
一応私も動揺していたのだと思います

「粘液癌は、例えるなら風船の中で癌細胞が粘液を作り出しながら増殖するので、比較的進行がゆっくりしています。風船の中だけなのでリンパへの転移が無ければ予後も悪くないと言われています。
野水さんの場合、核グレード(核分裂の程度を評価したもの)は1。
エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体(癌細胞の増殖に関わる蛋白質)はいずれも陽性。
HER2は陰性でした。」
「……(カタカナだらけでちんぷんかんぷん)」
「ステージⅡで、10年生存率は80%。ここまで大丈夫ですか?」
「専門用語ばかりでよくわかりませんが、簡単に言うと“癌だけどそんなに悪くない”ってことですよね?」
「まぁ、そうです。抗がん剤は効果がないのでホルモン療法になりますが、癌そのものは切除するしかありません。」
「抗がん剤をしなくて良いなら、あの副作用に苦しむことはないのですか?」
「そういうことですね。」
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ここまでの説明をさっくり会話形式で書きましたが、先生は非常に丁寧に、こちらを気遣いながら言葉を選んで現在の私の状態をお話しくださいました。
このあと、実際の治療方法についてさらに具体的な話へと進みます。
と、その前に。
今日は吉祥寺のドン・キホーテ裏にあるパンの美味しいお店に立ち寄り、明日の朝食用に食パンを買いました

入院する前に美味しいものを食べておく作戦
