高校3年生

進路を決めかねていた


母は家から通える範囲での

進学を希望していた

この圧のかかった心休まらない環境にいるのは、もううんざりだった

でも、どうしていいかわからない…

そんな時、知り合いのお巡りさんから、婦人警官とかいいんじゃないの?

試験に合格すれば、警察学校行きながらお給料ももらえるし、制服も支給されるよ

ただし、婦人警官の枠は狭いから、勉強を頑張らないとね


婦人警官

そんな選択肢があったのか

それならこの家から出られる

なんだか急に光がさしたような気がした

今まで部活三昧で、勉強をおろそかにしていた

試験日までは、後3ヶ月

間に合うだろうか…

婦人警官の試験を受けたいと言ったら、落ちたら大学か、短大に行くことを条件付きで許してもらえた

必死に勉強した

夜は1時まで、朝は5時から勉強した

休み時間も勉強して…

でも、勉強すればするほど

自分の実力の低さに落ち込み

それでも、必死に勉強した

あっという間に、筆記試験日になり、試験会場に行った

とある学校が試験会場だった

たくさんの人がいて、1クラス30人位に分けられ試験を受けた

その日の内に合否がわかり、受かれば二次試験に行ける

1次試験合格発表、

私のクラスでは

受かったのは2人

私の両隣の2人だった


結果を聞いて、呆然とした

ショックだった


ちゃんと帰らなきゃ

そんな気持ちが頭の中をぐるぐるしていた

駅につくと、公衆電話が目に入り、家に電話した

母が出た


どうだった?

その声を聞いた瞬間

涙が溢れ出てきた


…だめだった

落ちた…

涙が止まらない


ちゃんと気を付けて帰って来るんだよ

と言われ、頷く事しかできなかった

電車に乗っても、涙が止まらない

悔しくて、切なくて、

もっと頑張っていたら良かったと後悔し、

あれだけ頑張ったのに…

初めて自分で決めて、親の言いなりにならない進路を決めたのに…

また、親が望む道を歩かなきゃいけないのか…

試験に落ちた不甲斐なさと

無力な自分が悲しかった

しばらくは無気力だった


母との約束通り、その後学校の先生と相談して、推薦で行ける学校を探した

保健の先生に慣れる大学に

面接を行くと

面接官から


母子家庭なんですね?

お母さんは、どんな仕事をしているの?


もし、この学校に受かって資格が取れたら、あなたが家計を支えるの?


お母さんを支えている男性はどんな人?


この質問は耐え難かった

母子家庭って、こんな風に見られているんだ

母子家庭の子供は、家庭を支えるために働き、母親には男がいて…

確かに母には彼氏がいた

でも、その人にお金をもらったりしていないはず…

たぶん…


思春期の私には、本当に嫌な質問だった

母を汚いもの、自分も汚れているように見られているように感じた


初めはにこにこ笑顔を絶やさないようにしていたが、たぶん誰が見ても不機嫌な表情に変わっていった

面接が終わると、すぐに学校に行き、たぶん落ちたから、次の学校に推薦してくださいと先生に相談した

次は、栄養士の資格が取れる短大に…

そこは面接もなく、書類だけで受かった

入学金や授業料が高く、ちまたではお嬢様学校と呼ばれていた学校だった


母の望みは半分は叶った

私を短大に行かせること

それは母子家庭で育てた自分の子供が、上の学校に行かせることが母のステータスだったから


でも、その学校は通うことは出来ないため、少し渋っていたが許してもらった

ただし、学校に学生寮があったためそこに入ることを条件だった


やったー

嬉しい

母が望む進学は、あまり喜ばしい事ではなかったけど、家を出られることが嬉しかった


短大生活は楽しかった

友達もでき、母の監視の目がないというのは本当に快適だった


冬休みや、夏休みなどの長期の休みは、住み込みでバイトができるスキー場近くのホテルに行ってた

なるべく家に帰る時間が、短いようにしていた


あっという間に学生生活も終わり、次は就職

さあ、どこにしようかと悩んでいると母から電話が来た

話があるから、帰って来なさいと…

次の休みに帰ると、おじさんと母が待っていた


卒業後の就職だけど、おじさんが口を聞いてくれたから、

◯◯銀行に決まったからね

と言われた

???

私の意志とは関係なく、また母の望むように目の前にレールが敷かれた

おじさんの口利き

いわゆる縁故である


眼の前におじさんがいて、無下に断る事もできず、どうしたらいいかわからないでいると

母が得意そうに

お給料、ボーナスとかの待遇を説明していた

おじさんに頼みこんで、いいところをお世話してもらったのよ

良かったわね


断れなかった

条件が良かったのもあったが

おじさんの顔を見ていたら、断れなかった


あぁ

またこの家に帰って来なきゃいけないのか…

また自分の無力さにため息がでた