俺、九十九直也は大学生になるまで友人と呼べる存在が一人もいなかった
俺に関心を持ってくる人間は少なからずいはしたが、俺から誰かに関心を持つことは全くと言って良いほど無かった
そんな俺に対して周りの人間も次第に俺に関わらなくなっていった
俺の人生は無色だった
だが、大学入学をすると同時に世界の色が一変した
「アイツ、何か暗そうだな…人付き合いとか苦手なタイプだろうな、きっと」
どの学校にもこんな事を言う奴は少なからずいる
言いたければ言ってろ、どうせ付き合う気は無いしあんた達も俺と付き合おうなんて思わないだろう
「あと同じクラスで挨拶してない奴は…と
あ、いたいた」
小走りで駆け寄ってくる奴がいる
教室内だと言うのにだ
「初めまして!
俺は関口真琴
君は…九十九直也君、で良いんだよね?」
「あ、あぁ…そうだけど」
「へへっ、今日から三年間宜しくな!!
まぁ、三年と言わずに一生ものの友達になりたいけどな」
友達…俺には無縁だった存在
あるいは、一生縁がないかもしれない存在
「あんた、少しうるさいと思うぞ」
「あ、悪い悪い
よく言われちゃうんだよね」
関口真琴と名乗った男は「あはは」と笑いながら頭を掻いた
俺がこの男に持った第一印象は単純なものだった
うるさい奴
そんなマイナスイメージばかりを周りの人間に持っていた
俺は適当にあしらい、無理矢理会話を終わらせた
その日は誰とも話さず、学校での時間が終わり、一日が終わった
翌日、再び登校をする
通学路では「おはよう」と挨拶をし、それに応える声が聞こえる
「よう、おはよう」
「……?」
俺に対して…言ったのか?
こいつ…あぁ、関口か
特に言葉を返さず、適当に会釈だけをする
「おーい、朝の挨拶は基本だぜ?
良好な人間関係を作るためにも、な」
「……フン」
鼻で笑うように息を漏らし、歩を早める
「……って、まさかの無視!?
おーい!待てよ~!」
この日は随分としつこく絡まれた気がする
放課後までずっとだ
だが…不思議と悪い気はしなかった
毎日こんな調子で関口と関わってる内、いつの間にか俺達の周りには人が増えていた
あぁ…これが友達か
これが…親友と呼ぶに足る存在か
大学に入ると同時に両親は事故死し、俺は独りぼっちになった
苦はなかった
ただ無色だった人生のつまらない色合いが少し濃くなっただけだった
しかし…大学生活で五人の「親友」が出来た
それからは灰色と呼ぶに相応しかった人生が様々な色に満ちた気がした
大学での満ち足りた三年間を過ごし、無事に五人の親友と卒業した
その時は丁度MMORPGと呼ばれるゲーム、「ソード・アート・オンライン」の話題で持ちっきりだった
その話題に我先にと真琴は飛び付いた
卒業祝にみんなで遊ぼう、などと言い出した
就職を考えなければならない時期に何を言い出すのか、とも思ったが、俺もその案に乗った
そして、正式サービス開始当日
事前に打ち合わせた時間丁度に設定を終わらせ、ナーヴギアを被りベッドに横たわる
初めての経験と今から始まろうとしている無限の世界、無限の冒険に心を踊らせながら、俺は仲間達が待っているであろう冒険の地への合言葉を口にした
「リンクスタート!!」
