おれのおとうと
すごいだろ
すごいんだな
しらなかった
はじめてよむんだ
きょうみがなかった
こんなにんげんだったのか
しらずにいた罪は
償えないな
おれは生涯悔やんで生きる
おまえに
大学進学をすすめたこと
登山を意図せずすすめたこと
おれの登山は
安全なこどもでも登れる低山のイメージだった
エベレストどころか
海外遠征なんて
あり得ない世界だった
ゆび
ピアノを弾くためのゆび
喪って
つらかっただろう
民子おかあさんのピアノが弾けない
おれ
歓喜の歌
何故か弾けるようになった
おまえが弾きたかったのかな
史多
なまえすら
呼んでいなかった気がする
となりに座っていても
手も触れず
あれで最後になるなら
電話番号なんて
教えなければよかった
来月は必ず迎えに行くよ
いつの予定なんだ
言えばよかった
言えていたら
あそこで終わりじゃなければ
とめた
絶対に最初の海外遠征を計画させなかった
だれになにをいわれても
史多に恨まれても
行かせなかった
みえていたのかもしれない
史多が
キラキラしたなにかに包まれていて
もうとめられないにしても
ビフォーユーゴー
おれは後悔しない
でも悔いている
おれさえ居なければ
