新しい図書館は無くても良かったとおもうよ
建物は古くなるほど想いが宿る
この町民センターには
綺麗な風が流れているよ
八幡神社やお寺もあって
小さな函館みたいだよ
函館でさえ
わたしには都会だから
このまちで
ちょうど良いな
のぶたんが育ったまち
育った家
暮らした部屋
わたしと彼女が遭遇して
微妙な顔をしていた階段
フェットチーネを
小洒落たソースで作ってくれて
おとうさんと３人で食べたテーブルと椅子
寝そべってダーク史多になっていたソファー
カビていた礼服
遺した地球儀
函館空港まで
何度か
送り迎えしたこと
甘えたように電話で呼ばれた名前
いちどもおねえさんとは呼んでもらえなかったこと
たったいちど
断っただけで来なくなった電話
登録した番号も
遺っていない
嫌われた
もういいや
此方からかけなかった電話
もともと電話が苦手
史多に見えていたわたしと
実際のわたしの差
勝泰に
トトロのめいちゃんみたいだなって
呆れられる行動や
小さなお菓子のパッケージを宝物にして
捨てられて怒ること
のぶたんはきっとなにも知らない
部屋中に溢れかえる洋服が
小学生の頃から変わらない体型のせいで
捨てられないから増えたものだとか
コルディアさんの
わたしにしては高級な服は
ぜんぶセール品で
クローズドセールとか
キムラさんたちスタッフさんに
ご案内ハガキを貰って
買い集めて
だいじに仕事着にしていたとか
ぜんぶいまも着られるとか
きっとおばあちゃんになっても着れるとか
ちゃんと貯金もしていたし
天皇陛下の皇太子御成婚記念かんぽに加入していて
おかねなくなって解約したのに
証書がもったいなくて捨てられないとか
贅沢なんか興味ないとか
ジュースは一切買わないし
外でごはんを食べるのは
旅行中やおつきあいだけだし
現金に興味がなくて
目の前に札束があっても
面倒くせぇって見ないふりするとか
おかねもちに興味が無いとか
きっと知らない
きょうだいなのに
なにもおたがいにしらない
親どもの阿呆さかげんに
がっかりだ
顔合わせすらなく
親戚のかたたちすら知らず
勝泰の顔も名前も
認識せず
のぶたん死んじゃった
もったいないな
いっぱいおもしろいはなし
きけたのに
しんじゃったんだね
エベレストなんか要らないのに
爆破しとけばよかった