ゆで卵を茹で、後で食べようとテーブルに転がして置いたのだけれど、
ずっとテーブルに白くて丸いものがある光景に違和感を感じて、
持ってみたら『ナルシスの変貌』に見えたから寄せて撮ってみたっていう写真。
『ナルシスの変貌』はダリの絵です。
気になる人はググってください。
朝にラヂオ屋からメールが届いて、どうせまたくだらない情報だろうと開いてみたら、
新聞記事の写真だった。
そこには「三重県立美術館でダリ企画展開幕」と書かれていた。
展覧会の情報は、不定期ではあるけれどネットでしばしば見ていた。
行ってみたい美術館博物館、期間限定の特別企画展、
それらを眺めながら、見たいか否か、行けるか否かなど、
あれこれ妄想を巡らせるのが僕の一つの愉しみでもあった。
それが、昨年来の不要不急の外出自粛要請により、
すっかり諦めムードというか、知らぬが仏というか、
どうせ行けないのなら情報を見る方が目に毒だと、
ここの所、展覧会情報はずっと見ていなかった。
まさかのラヂオ屋情報。
奴からダリ情報を得るとは。
世も末だ。このまま人類は滅ぶのかもしれない。
おっと、今の御時世には不要不急の不謹慎なジョークでしたね。
上記発言を撤回します。
懐かしい話を一つ。
高校3年生の秋、僕は親に東京2泊3日の旅を申し出た。
理由は「受験したい大学の雰囲気を知るため、学園祭を見に行きたい」だった。
説得の顛末は覚えちゃいないけれど、許可は下りた。
上記理由は確かにあったけれど、2番目だった。
1番目は、上野の森美術館で大々的なダリの展覧会が開かれることだった。
どうしても、嘘をついてでも、本物が見たくて見たくて仕方がなかった。
確か、東京に行ったのは文化の日で、
祝日ということもあって上野の森美術館には長蛇の列ができていた。
入場制限も行われていて、2~3時間は待ったと思う。
並ぶことが大嫌いな僕にとって、歴代5本の指に入る待ちだった。
初めて本物のダリの絵を見たのは、その時だ。
その後は彼の展覧会が行われると聞けば、西へ東へ度々足を運んだ。
10年前のパリでもダリ美術館は必須訪問先だった。
まさか我が膝元で開催される展覧会を奴から知ろうとは。
本当に世も末…否、僕が終わってるんだな。
かの時の、かの情熱を、
残って古くなっちゃったからゆで卵にするかと茹でたら、
強火のままでガンガン鍋に当たってヒビが入り、
いっぺんに2個も3個も食えねぇしとテーブルに放置したまま忘却し、
ん?こんな所に卵置いたっけ?と拾い上げてみて、
そう言えば、この卵も朝茹でたけれど、
朝ラヂオ屋から有難いメールが来たなぁ、
県内だし完全防備なら行ってもいいかなぁ、
行きてぇなぁと、
ただ白い卵をじっと見つめながら、想う。