不要不急の外出を控えよ。
フヨウフキュウって何?
必要でもないし、急ぎでもないけど出掛けよう。
デートとか散歩とかって、そういうもんじゃないの?
解ってる。「今は」ってのは解ってる。
それでも、生きるって何なのさと問わずにいられない。
なので、
他人と3m圏内に30秒以上接近しない方法で、散歩に出る。
しかも自分の飛沫を封じ込める頑丈なマスクを被って。
黒マスク。非公共交通機関。
朝目覚めて、いい天気なのにウンザリする御触れのためにモヤモヤしていたら、
「走りに行かないのか?」とメール。
メールの主は、ここ数日、発熱が続き、
「こ、これは保健所に相談した方がいいのだろうか…」と、
体よりも気を病むという、気の毒な人。
今日は、自分は病み上がりで出られない所に、
友人たちがこぞってライディングに出かけるわメールを送ってきて、
ついでに僕にもメールを送ってきたようだった。
お蔭で、モヤモヤするくらいなら弔いじゃと、腰を上げられたのだけれど。
不要不急のライディングのため、目的はない。
気の向くまま、気持ちが良さそうな方へ。
黒い伊吹山。2月にバイクで来れちゃうんだもの。
「凍結注意!」とか「チェーン着脱場」とかの標識が虚しい。
近江の国、琵琶湖。長浜市だから湖北東岸。
カルガモかヒシクイか、たくさん浮かんでた。
老夫婦が湖岸を歩いてた。
不要不急の外出の禁を破った夫婦。
仲睦まじい夫婦。
長浜城。桜が咲いたら綺麗だろうな。
本名は「長浜城歴史博物館」。1983年、鉄筋コンクリート造。
浅井長政攻めの功で、織田信長から浅井氏の旧領を拝領した羽柴秀吉。
当時「今浜」と呼ばれていたこの地を、信長の名から一字拝領し「長浜」と改名。
長浜城は、秀吉が最初に築いた居城であり、城下町形成の基礎を醸成した所である。
うむ。太閤殿下の出世の始まり。
どどーん。日輪を頂く、長浜城。
中が博物館になっていて、天守のバルコニーに出られるのだけれど、今回は割愛。
3m&30秒ルールと、帰路に着かないと日が暮れちゃうから。
本当に良い天気で、どこをどう走っても気持ちが良かった。
空気が澄んでいると、山は近くに迫って見える。
山間を抜け、湖岸を走り、急かされないのんびり時間を過ごす。
僕には、生きるために必要な時間。
明るいうちに帰って来られたなと、最寄りのコンビニでコーヒーを飲んでいたら、
メールに着信が入っていた。
「洗車してる」
病み上がりの気の毒な人。
まだ明るいし、ちょっと寄ってみたら、ガレージで愛車を拭いていた。
「結構、走ってきたじゃないか」
「まぁね。空前のバイクブームで、今日はたくさん走ってたぞ」
「だろうな。知り合いは南の方に走りに行ったみたいだし」
「とりあえず、解熱したようで何よりだ」
「何とか新感染者に名を連ねずに済んだ」
と話してる傍から、バイクがもう一台停車。
仕事柄、彼は顔が広いが、バイクに乗り始めてから尚更広がったようだ。
ラヂオ屋ガレージ前の紅梅。
白梅。紅白で縁起が良いやね。
知り合いとのバイク談議に花を咲かせていたので、
僕は咲いた花を撮って帰り支度。
陽が暮れると、さすがに冷える。
帰り際、病み上がったと思ったらテレビの調子が悪いから来てくれと頼まれたと、
残念そうな顔で見送る彼を尻目に、帰路に着いた。
君のお蔭で、僕ぁのんびりできたよ。
花粉はたくさん浴びたけど。へっくしゅん。