ずっと、ずっと行きたかった場所。
いつの頃からか、僕は神殿のように思ってきた。
「世界中の美しいものが集められている場所」。

Musee Du Louvre 。ルーブル美術館。
今回の旅の一番の目的は、ルーブルを見ること。

旅には、たくさんの楽しみがある。
食事、ショッピング、名所旧跡など。
だから、「せっかくパリに行ったのに、それをしないなんて!」と、
思う人もいるだろう。

僕は、パリ滞在中、行動時間の半分はルーブルにいたんじゃないかな。
歩いて、見て、思い耽って、また歩く。

贔屓目を消し去ろうと努力しても、
消し去れないくらい、素晴らしいコレクションだった。
「世界で一番」という格付けができるものではない。
されど、秀逸なものが数多くあるという看板に、偽りはなかった。

感嘆の溜息をつきながら、頭の中を芸術で満たす。
畏怖と敬意を感じながら、心を芸術家の魂で満たす。
本当に、嬉しかった。

少年時代の夢が、現実になった。
本当にフランダースの犬のネロのよう。
「僕は見たんだよ。ルーブルのコレクションを」って。



中央入口。言わずと知れた、ガラスのピラミッド。
ルーブル宮の中庭に立てられたモニュメント的出入口。
ここから入ろうと思うと、少なからず時間がかかる・・・。他の入口を案内しろって。


 
サモトラケのニケ。
この左側のアングルが、僕は好きだ。女性の美しいラインに見惚れる。
見上げながら、何周もぐるぐる回った(笑)
階段の踊り場に設置。なんちゅう贅沢な踊り場。人と比べると巨大だと分かる。
バックショット。写真集でも見たことないでしょ。翼は左右非対称で、流線型。
船の舳先にあったという推測も、あながち外れじゃないと実感。


 
ミロのヴィーナス。
ニケに続き、欠落の美学。完全体なら、ここまで評価されないだろうな。
ギリシャ彫刻の女性像は、たくましくて素敵。日本のファッション雑誌のモデルを並べたら、いかに貧相か分かるんじゃないかな。やせ過ぎはいけません。・・・自爆。
バックショット。ツアー客が来ると混み合う。ちょっと半ケツなんだよね(笑)



ドゥヌン翼2階。
直線500m、高さ9m、幅10mってところか。地下鉄が2本走れるよ。
13~18世紀の名立たるイタリア絵画が並ぶ。
「ダヴィンチ・コード」で、館長が死んでいた廊下は、ここ。


 
 

G・アルチンボルド『四季』。モリサチさん、見てきましたよ(笑)
芸の細やかさ、見事。ダブル・イメージは大好物。
ね、廊下かよって所に普通にある(笑) 奇抜さに、人は一応立ち止まるけど。

  
E・ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』。こうやって撮ると美術書の方がよく見える。
左下、同じくE・ドラクロワの『サルダナパールの死』。『民衆…』も、これと同じくらいの大きさ。
禿げたおじさんが身長180cmくらいだとすると・・・本当にデカイんだ。自由の女神は巨人でしたよ(笑)
右下、一番デカイのがJ・L・ダヴィッド『ナポレオンの載冠式』。壁際の小さい人、子供じゃないです・・・。
ドラクロワは、劇的な描き方の天才。こんなに巨大なキャンバスで、構図や色彩に狂いも無駄もない。フランスが愛する画家なのも納得。

 


そして、L・ダ・ヴィンチ『ラ・ジョコンデ【モナ・リザ】』。
・・・・・・。
特別室があつらえてあり、美術館のあちこちに「モナリザはこっち」って看板が出てる。
観光客は、彼女を目指して他の名画には脇目も振らず、一目散に駆け抜ける。
結果、人だかりは絶えず、彼女と写メを撮ろうと、彼女に背を向ける人たちが場所を陣取る。
もはや名画ではなく、名所なのだ・・・。

防弾と紫外線よけの色つきガラスで覆われ、手すりに加えて、ロープで距離が取られる。
禁止されているフラッシュがガラスに絶えずピカピカと反射し、世界中の言語がギャーギャーと騒ぎ立てている。
鑑賞なんて、ここにはないんだ。

あれは贋物なんじゃないかな。ふと、思う。
本物の彼女は、どこかで、静かで穏やかな場所で、微笑んでいるんじゃないかな。
世界の喧騒と愚かさとは、無関係な場所で。

僕の恋は、落胆に終わった。
ずっと想い続けた彼女は、手の届かないスーパースターだった。


ルーブルには、美しいものがたくさんある。本当にたくさん。
感心の旅は、広い宮殿の中で、まだ続きます。