家電製品を、どこで買うか?
このご時勢、ほとんどの人が量販店と答えるに違いない。
TVCMの効果は絶大だ。
「どこよりも安く!」と言われれば、得をしたい気持ちが疼く。
僕も、大学に入り、一人暮らしを始めた時、
結婚して、新しい生活を始めた時、
量販店で家電製品を揃えた。
では、家電製品が壊れたら、どうだろう。
壊れた物は粗大ゴミと化し、新しい物を購入するのではないか?
金額的な損得を第一理由に。
思い入れの希薄さを第二理由に。
売った人との関係性がないことを第三理由に。
もちろん時代の流れは止められない。
新型が次々と売り出され、ソフトもハードも更新せざるを得ない。
VHSで撮った懐かしいビデオは、ブルーレイでは見られない。
壊れたのをきっかけに、
初めて自分で買ったビデオデッキも、
新型のレコーダーに取って代わられる。
地デジ化のために、TVを買い換えなければならなくなった。
僕は、友人のラヂオ屋に依頼した。
ラヂオ屋は、町の電気屋さんのことだ。
家電製品の主がラジオだった頃から、長年続いている電気屋さん。
小売りや下請け工事を生業にしている、
田舎の、どこにでもあるような電気屋さん。
押し売りされたわけでは決してない。
どころか、
「価格からすれば、量販店の方がいいよ」
と笑って教えてくれた。
何でも聞けて、相談にのってくれる。
自分にない知識や技術を提供してくれる。
修理やメインテナンスなど面倒くさいことを、快く引き受けてくれる。
どこかのカスタマーサービスなんて目じゃないほど、
自分の事情を分かってくれている上で、
スムーズに最適化してくれるのだ。
「価格」ではない「価値」が、ここにある。
「昨日も、近所のお年寄に頼まれちゃってさー」と、
時間外の仕事に愚痴をこぼしつつ、
「明日また様子を見にいかなきゃなー」と、
笑っている彼のことが、僕はとっても素敵だと思っている。
もちろん本人には、「阿呆やなー」と言うが。
「くだらないメールを無闇にばらまく」というのが、
僕らの仲間内での、彼への寸評だ。
なのに、皆がそのメールに返信しつつ、
他のやつには言いにくいことを追加しているらしい。
先に挙げたラヂオ屋の価値は、
家電製品だけでなく、僕自身のメインテナンスのことかもしれない。
もちろん本人には、「うるせーよ」と言うが。