昨年の12月、某旅行会社にて通訳ガイド(以下、ガイド)が集まる忘年会に参加しました。 

 
参加してみて感じたこと。
 
仕事の獲得に四苦八苦しているガイドさんたちが多いこと。
 
今、訪日外国人が増えていて、電車に乗っていても観光客だと分かる人たちが結構います。それに伴い、ガイドの仕事も増えているのに、なぜ、上記のようなことになるのだろう?と不思議に思うかもしれません。確かに、コロナ前の水準を上回る勢いで外国人観光客が来ていますが、ひとりひとりガイドの状況を見てみると、それほど大きな収入増には結び付いていない現実があります。そのため、ガイドをしている人には会社をリタイアした中高年の方が多くいらっしゃいます。一番求められるはずの体力が旺盛な若年層が少ないのが現状です。もっとも、少子高齢化で若手の人材が少ないのはどこの業界も同じですが・・・。
 
そもそも、ガイドは稼げる仕事なのでしょうか?答えはノーです。7月、8月、12月、1月、2月は閑散期で、仕事量も減少します。確かに、一部の人気ガイド、カリスマガイドなる人たちが存在し、月収50万円以上稼いでいるガイドはいますが、ごく少数です。ここまでの高収入にならずとも、仕事はベテランに集中し、年収200万円を切るガイドが大半なのです。
 
訪日旅行会社の中には、通訳案内士の資格がなくても業務ができるようになり、かつ、外国人観光客が増えたのをいいことに「稼げる」を謳い文句にし、色々なセミナーを開催し、ガイドになりたい人を釣ってお金を取り、いわゆる「セミナービジネス」のようになっている企業もあります。セミナーに参加しても、なかなかガイドデビューはさせてくれません。こういう会社は良いガイドが育とうが育つまいが、現金収入さえ手に入ればいいというわけです。こんなあくどい企業もあるんです。
 
また、通訳案内士の資格が必要でなくなったことを逆手に取り、安い日給、時間給で買い叩いている企業も多く見受けられるようになりました。
 
そして、ガイド志望者について。実は、ガイド志望者や現役ガイドの中には、外資系企業勤務経験、海外留学経験がある人、海外旅行が好きな人が多く、海外生活が忘れられなくてガイドをしている、希望する人が多数いらっしゃいました。たとえば、他国のことはよく知っていても、肝心の日本の文化や歴史をよく知らない人、愛着が薄い人もいます。日本に興味を持ってくださる外国の方に、日本を知ってもらえる、いわば「売り込む」チャンスなのに、日本人でありながら日本を知りません!では、外国人観光客の方はガッカリして帰国の途に就かれることでしょう。これでは、日本の良さを理解してもらえません。
 
ガイドの目的は外国の方と英語でコミュニケーションを取ることではありません。日本には日本人でさえ気づいていない良いところ、セールスポイントがたくさんあります。それを知ってもらうこと。これこそが、実はガイドの醍醐味です。訪日旅行会社は営利にばかり走るのではなく、ガイドに日本を売り込む方法の伝授、給与、就労環境を含めたガイドの育成に力を入れるべきだと考えます。