多分、僕は二人を許さないだろう。

間違いなく、殺す。いや、社会的に抹殺する。

僕はそれができる。簡単に。


僕の頭の中には、母を想い泣く子の声がしている。

助けられなかった。その思いだけだ。


あと少し早ければ。悔いが残った。


理解できないだろう泣く子に僕はこう言った。


お母さんを助けられなくてごめん。泣き止むことはなかった。


その思いが僕を凶暴にしていた。


それで良いのだ。

呼び止められた。

この人から呼ばれるとろくなことが無い。ある種破滅しかねない。

僕はこの人をパンドラと呼んでいた。この人の箱の中には絶望しか入っていない。


片手に白い手袋をしていた。火傷を悪化させたという。


指で弄くり倒した結果だと言う。有り得ない。


初めて気づいた。身体の至る所に火傷痕や傷がある。


顔は美形、身体は絶品。いつも全身を覆う格好をしていた。


ノースリーブは珍しい。だが、その理由がこれとは。


自傷の跡を隠すため、そうしていたのだ。


過去も今も深くは知らない。


だが、体中に自傷跡を持つ。


僕はこの人の依頼を受けるか悩んでいた。



調査は簡単だった。

すぐに採用され、顔と体が良ければ仕事になる。

外交員ルートだ。今は偽名で通用する会社はない。

離婚はしていないから、名前は変えられない。

ルートを通じて、僕はすぐに行き当たった。


女は外資系営業会社に勤務していた。


明日でも客のふりをして会ってみよう。


彼女の意思を聞いてみたい。そう思ったからだ。


彼女を指名して、僕はファミリーレストランを場所に選んだ。


さて、彼女の答えは僕にどう映るだろう。