現在が苦なら、
より良い未来も信じにくい…


ファッションデザイナーのトムフォード初監督作品。
それを分かってたからか、
服や家や小道具なんが凄くオシャレに見えて、
また、役者以外にそういった小道具だけのカットもたくさんあったので、
全体を通じて、キレイに仕上がっていた。


『モーリス』以来になるのか、
コリンファースがとことん愛した同性愛者を演じる訳だが、
全体的にセリフも少なく、
コリンの演技に依存していたところも、
内容と合致していて良かった。


人間の真の敵は恐怖。
老いや孤独からの恐怖。
偏った知覚を通してしか外部を経験出来ないことに孤独を感じる。
剰え、様々なものに人間は恐怖を感じ、
結果、恐怖が世界を支配している。


この映画は孤独という恐怖を、
見事に描き切っている。
哲学的ではあるが、
コリンが自殺を試みるシーンなんて、
リアリティがあるのに、
クラシック音楽との融合で、
非常に美しく撮っている。


若干トムフォードが?って舐めてたとこもあったが、
内容の薄いただのオシャレ映画ではなく、
シングルマンというテーマを、
コンパクトに巧く仕上げていた、
なかなかイイ作品。


しかし、人間なんていつ死ぬかなんて、
誰も分かんないんだよね。

イカれた都で生きるには、
自分がイカれること…


香港映画の鬼才パクホーチョン監督作品。
余りにも残忍性が高く、
香港では公開延期になった程。


なるほど、今年は園子温監督の『冷たい熱帯魚』も
かなり強烈ではあったが、
この作品は死に様がクレイジー過ぎて震撼する。
三池監督みたいに血飛沫がプシューって感じではなく、
切られたりする時の苦しみ方、
まさしく身悶え方に、
観ていて戦慄が走る。
しかし、布団圧縮袋をあんな風に使っちゃ、
日本直販から抗議来るんじゃないか?


まぁ、この作品の本当の恐怖は、
ただのバイオレンスホラーだからではなく、
香港の経済事情を織り交ぜた内容になっていて、
あらすじが既に出ている通りの、
OLがイカれる話なんだが、
過去と現在の時間軸を巧く交差させて、
あらすじに弾みを付けているとこが、
非常にうまかった。


追い詰められていく過去、
エゴが倍増していく現在、
ただ、自分のマイホームが欲しかっただけなのに…。
欲ばかりが蠢く社会システム。
ラストは『ミスト』以来の後味の悪さ。


しかし、どこの国でも、
政府と闇社会が結託していて、
一般の人々が追いやられるもんなんだなぁ。
剰え、ヒエラルキーの最下層の人々が犠牲となって、
街の繁栄を築き上げたのに、
結局はポイ捨てされるんだなぁ。


競争社会=資本主義ではなく、
天は人の上に人を作らず、
人の下に人を作らずが、
資本主義なんだなぁ。

教訓
中国製の安い万能ナイフは、
買うべからず


『ザ・ビーチ』
『スラムドックミリオネア』の
ダニーボイル監督最新作。

本年度のアカデミー賞にもノミネートされただけに、
大変期待していた。


イントロからブルージョンキャニオンの大自然が美しく、
自然のいいところを出してくれるとこや、
『旅するジーンズ』にも出演していた、
アンバー・タンブリンと
ケイト・マーラが、
飛び込んで遊んでるとことか、
ダニーらしい映像で、
行ってみたいという気にさせてくれる。


が、最後の山場のシーンでは、
スプラッター過ぎて、
痛々しくて生理的にしんどいシーンが割とあったし、
大自然と人間のエゴの対照だったり、
正義は勝つみたいな主人公の持ち上げ方だったり、
ダニーボイルさがらしさではなく、
逆にワンパターンに思えた。


最後の救出してもらう時の音楽はなんだ?
あれじゃヒーローが傷つきながら、
帰還した時の描写じゃないか。
『ザ・ビーチ』のサントラは、
未だにあれ以上のサントラはないと思えるほど、
素晴らしいものだったのに、
なんだ、あの時の音楽は。
感動を誘う為ってのが見え見えで、
陳腐であるぞ。


確かに、ダニーの撮影技術の高さ、
あの極限状態がひしひしと伝わってくる、
カメラワークは本当に素晴らしかった。
空撮とハンドキャリーでの使い分けも、
非常に上手かった。


しかし、心奪われる物語で、
世界中に感動と勇気を与えるとかいうけど、
あの状況で、
・削る
・動かす
・手を切る
の選択以外はないでしょ?

家族のことや恋人のことがフラッシュバックして、
自分の行いに悔い改める訳だけど、
めっちゃ取り乱してたし、
言うほど来んかったかなぁって感じ。