大宮BL妄想物語。
*閲覧注意*






O.side





「ねぇ、智くんお願いー」



「えー」



「頼むよー」



「俺興味ないし」



「でも、きっと気分転換になると思うよ?
嫌いじゃないでしょ?何かを作ること」



「嫌いじゃないから、
わざわざ習わなくてもいいじゃん」



「えーそんなこと言わないでよー
俺を助けると思ってお願いします!!」




20才の頃アルバイト先で知り合ってから
15年来の付き合いで俺より一つ下の櫻井翔に
料理教室というものに行こうと誘われている。


アナウンサーをしている翔くんが
今度料理番組を担当することになったらしい
でも、料理というものを全く経験がない彼は
料理を習いたいらしいが一人では心細いから
と説得されている。




俺、大野智はデザインの仕事をしている。

一昨年勤めていた会社を辞め
独立し自分の事務所を立ち上げた

今は自宅兼仕事場となっている為
完全に引きこもりの生活にはなっていた。



確かに気分転換にはなりそうだ、、
と思い…





翔くんの知り合いが開いている教室の
体験に参加することになった。



料理教室と聞くと女子がきゃぴきゃぴして
やっているイメージだったが、
ここは男性クラスですごく気が楽だ。




「今日はハンバーグを作ろうと思います。
まずはレシピに書かれている材料を冷蔵庫からだし台の上に揃えてみましょう」


翔くんは紙を手にし
俺が冷蔵庫から1つ1つ出していった。


「では、たまねぎをみじん切りしましょう」


たまねぎの皮を向き、半分に切る。
講師の二宮先生が作業をしながら
工程を説明する。


ハンバーグは作ったことないな。


翔くんがたまねぎを手にした。


「智くん?これの皮を向くんだよね?」


「そうだよ」


インテリで容姿端麗、一見完璧そうな男だが唯一の弱点が不器用なところだ。

でもそこが翔くんのチャームポイントだと俺は思っている。



たまねぎと戦っている翔くんの作業を俺は見守った。


無事に皮をむき終えた翔くんが
"やって"と言いたまねぎを俺に渡してきた。


あまり俺が手をだしたら意味がないと思うが
まぁ今日は体験だしと思いたまねぎを半分に切った。


半分にしたものを各々がみじん切りにする。

先生が手本を見せてくれた

皆が彼の手元に集中する。


── まるっこい可愛らしい手だな。


って俺は料理とはまったく関係のないところに目がいっていた。


先生に習いみじん切りをする。

こういった細かい作業は好きだ。


翔くんは俺が切っているのを
見ながらおっかなびっくりやっている。
その手元が心配で気が気でない。


すると、先生が来て


「翔ちゃん頑張って!」


と、甘えた可愛い声が耳に入り
思わず視線を向けてしまった。


先生と視線が合う…
すると、



「大野さんは包丁に慣れてるようですね?
みじん切りとっても上手です」


「あ、ありがとうございます」


笑顔を向けられた。

大人になり褒めることはあっても
褒められることはなくなったから
なんだかくすぐったい。










切る工程はたまねぎだけだから
それからは翔くんでも難なくこなしていた。

卵を割るのは得意らしく
ドヤッていた。

そんなところも憎めない。



ただハンバーグをひっくり返すのは
苦戦していたが。



先生の的確な指示で
ハンバーグは完璧に仕上がった。



皆で試食をする前に
使った調理器具を洗うのも自分でやる。

なるほど、ここはおいしい料理を習うだけではなく準備から片付けなど、キッチンに立つ上で大切なことも教えてくれるのか。。


翔くんが一番慣れなきゃいけないことかもしれない。



大きな楕円形のテーブルに
自分が作った物を運び
先生と生徒、皆で食べた。


またもや俺は彼に注目していた。


包丁は右手を使ってたのに
箸は左手だった。


本当は左利きなのか……



そして、ハンバーグを一口頬張り
こぼれた笑顔がとっても可愛いかった。