「キュヒョナ…大丈夫か?」
心配そうに呟くヒョンの声が聞こえた気がしてゆっくりと目を開けた。
「……なんでヒョンがいるの?」
夏風邪かカムバの疲れが出たのか、いきなりの体調不良に自分でもどうにも出来ずに昨日からずっと寝込んでたんだけど。
「どうして…俺連絡してないよね…?」
うなされて連絡どころじゃなかったはずだし、具合悪過ぎてほぼ寝てないから寝ぼけて電話したとも思えない。
「だって連絡しても返事がないから…」
そうかな。
普段から連絡しない事なんてよくあるでしょ?
なんで今日は来てくれたの?
回らない頭で考えてるとシウォニヒョンは難しい顔をしながら呟いた。
「胸騒ぎがしたんだよ、誰かに聞いた訳じゃないからな」
以心伝心?とかキモい事考えてたのに多分ヒョクチェヒョンが連絡したんだろうな、という考えに落ち着いてガッカリしてため息が出た。
…連絡しないでってあれだけ頼んだのに、全くあのヒョンは人の言う事を全然聞かない。
D&Eの新しいアルバムのレコーディングが終わってないヒョクチェヒョンは、ここの所忙しそうで帰って来れなくて、俺の看病が出来ないのを気にしてるみたいだった。
それにシウォニヒョンは嘘が下手なんだよ、口止めされてるのバレバレなんだから。
どっちが病人がわからない位、この世の終わりみたいに心配そうな表情で俺を見ているシウォニヒョン。
安心させたくて少し微笑んでみたんだけど、逆効果だったらしくもっと辛そうな顔で抱きしめられた。
「そんな顔で無理に笑わなくていいよ、しんどかったら何も喋らなくていいから」
ほら、この人にこんな顔させたくなかったのに。
好きな人のこういう顔は、自分がさせてると思ったら罪悪感で気分がいいものじゃないんだ。
俺の健気な気持ちを踏みにじったヒョクチェヒョンには、俺が元気になったら何倍にもして返してあげなきゃいけないとねって思った。
「どこが痛い?病院は?薬は飲んだか?」
「…大丈夫だって…落ち着いてよ」
「でも俺が来たからもう大丈夫だ」
謎に自信に溢れた言葉に思わず笑うと、また少しお腹が痛んで顔をしかめた。
シウォニヒョンは俺の身体を少しだけ起こして布団の中に潜り込んで来て、俺は押し返す元気もなくされるがままにいつもみたいに居心地のいい場所に収まった。
「身体が熱い…少し熱があるのか?」
「お腹の…風邪なんだって…。寝てれば治るから」
「そうか、しんどいな。大丈夫だから少し寝たらいい」
移るからそんなに寄らない方がいいよ?って言葉は思うだけで言葉にはならなくて、多分離れて欲しくないのは自分の方なんだってわかってる。
額に手を当てて心配そうに呟いたヒョンの手が気持ち良くて目を瞑る。
来てくれて嬉しいんだって事は伝わるよね?
甘えても許してくれるよね?
「そこじゃなくて、ここ触って…」
「え?どこが痛い?お腹か?ここ?」
「もうちょっと上…」
いつもなら触られるとくすぐったくて暴れるような場所だけど、今はそれどころじゃないから特に痛い所をさすってもらうと、思った通り痛みが和らいで安心してほっと息を吐いた。
不思議だけどヒョンの手はまるで魔法でも使ってるみたいだって思う。
心細い時、辛い時、この手に何度も助けられて来た。
「…ヒョンにそうやってしてもらうとさ」
「うん?」
「いつも良くなるんだ、どんな魔法…使ってんの…?」
「……念じてるんだよ、良くなれって」
「それで痛くなくなるなら、医者要らないでしょ…」
小さい時病気をしたら、母親が心配して看病してくれて、頭が痛い時も撫でられたら良くなったような気がした。
その時の感覚に似てるけど、ヒョンの方がずっと効果は絶大なのはなんでだろう?
やっぱり慈愛のオーラでも出てるのかな…永遠の謎だったりする。
「……大丈夫、すぐに良くなるから。俺がそばにいるからな」
大丈夫って言われたら大丈夫な気持ちになってくるし、少しさすってくれてるだけで何故か痛みが和らいで、安心して眠気が襲って来てヒョンの身体に力無く手を回した。
ヒョンの匂いが心地良くて、自分が昨日からシャワーも浴びてない事とか、水分や食事も摂れてない事とか、伝えたいけど眠気が勝って黙り込む。
「キュヒョナ、水分は取れてる?」
首を横に振ると枕元から水の入ったペットボトルを取ってくれる。
「戻してしまっても、少しずつ摂らないと脱水症状になるからな。飲める時にゆっくり摂るんだぞ」
「ん…」
「顔色が青いから、少し寝て調子が良くなったら何か食べよう。何も食べてないだろう?」
なんでわかるのかと思ったけど、そう言えばさすってくれてるお腹は多分、何も食べてなくてぺたんこになってるからかなって思った。
「…ヒョン、オンマみたい…」
「……オンマじゃないぞ?恋人だろう?まさか…意識が混濁してるのか…熱が上がってるのか…?」
「…冗談だってば」
「…そうか、いつも以上に余裕ないな俺。すまない」
可笑しくて少し笑って、安心して涙が出そうになって、でも泣いてるとヒョンがめちゃくちゃ心配するから甘えるようにシャツに顔を埋めた。
「キュヒョナ?すぐに良くなるよ、大丈夫」
こういうのってなんて言うんだっけ。
プラシーボ効果ってやつかな。
本来は薬としての効果を持たない物質によって、得られる効果の事。
思い込みって恐ろしいけど、いい効果ならあっさり信じてみたっていいと思う。
多分だけど、他のヒョンに撫でられてもここまでの効果はないと思うし、シウォニヒョンだから、シウォニヒョンの手だから、出来る事なんだって思うと嬉しくて安心して本当に泣きそうになるんだ。
「…キュヒョナ?まだ痛い?」
「ううん、でも、もう少しさすってて…」
「いいよ、安心して寝たらいい」
そう言ってずっとさすってくれる優しい手は、きっと俺がいいって言うまで止まらないんだろうなって思った。
そばにいるだけで嬉しくて、触れてるだけで安心して、ずっとこうしていたいと思わせてくれる人。
そんな人に出会える確率なんてどれくらいなのかな?
俺が寝たと思ってため息混じりに呟いた言葉に胸が熱くなる。
「……弱った姿を本当は俺には見せなくないんだろう?ごめんな…わかってても放っておけなくて…」
弱ってる姿を見せたくないけど一番会いたい人。
俺にとってそういう存在がシウォニヒョンなんだ。
いつでも俺を想ってくれてる言葉に安心して意識がなくなる前に、心の中で祈ったんだ。
この愛しい人にとってもそんな相手がどうか俺でありますように。
その魔法みたいな優しい手がずっと俺から離れませんように。
そして願わくばその気持ちが永遠に変わりませんように。
end.
こんにちは、奏です。
暑いですね…生きてますよ?
なかなか浮上せず申し訳ありません。
私はリタンズのFANSHIPは課金してますが、bubbleはやってません駄目ぎゅぺんです。←入れよ
入りたい気持ちは山々ですが…。
どうやら小耳にはさんだんですがぎゅったんは腸炎なんだとか∑(゚Д゚)
詳しい話は知らんですけど!
それはいかんです!
しうぉなに出動してもらってさすってもらわねば!
何もかも忘れて甘えてもらわねば!
って気持ちから生まれた作品です←単純
ってわけで100%妄想です。
相変わらずの緩さでごめんなさい。
これを楽しみに頑張ります。
読んでくださってありがとうございます!