…ここ?
はぁはぁ…
と肩を上下させながら息を整える。
こんなところにこんな店があったなんて。
あっちに行ってる間にでもできたのか?
…クラブ?
派手な装飾や色のネオンと違って
落ち着いた感じでこじゃれた…
いや、スタイリッシュな雰囲気を醸し出している
店の前に立ち小首を傾げしばらく悩んだ。
手にもったスマホに表示されている住所の店の名前を
もう一度確認して確かにここだと認識したところで
よし…と小さく声に出しその店に向かった。
しゃれたドアノブ。
それに手をかけゆっくりと開くと
中が意外に広くてびっくりした。
まず一面に広がるフロア。
照明が落とされているが決して不快な暗さじゃなかった。
若者が集まるような音楽とざわめきでひしめくような
そんな雰囲気とはまるで違ったシックな雰囲気が
心地よいと感じた。
…へぇ~
物珍しさであちこち見渡す。
…あれ?あの人…確か…
そこそこ入った客の中に見知った顔が何人もいた。
見知ったといっても友人知人の類ではなく
雑誌やテレビで見かけるような面々で
一般人が憧れと羨望の眼差しを向けるような人たちだった。
…へぇ~
物珍しさに思わずキョロキョロと見回してしまう。
まぁ、これは普段からする癖というか常に状況把握に勤め
有事に備えるといった具合で一種の職業病だと思っている。
それが今日初めて来たこの場所でも
遺憾なく発揮されてるということで…
だんだんその場に目がなじんでくると
物珍しさで店内をウロウロしているのが
気に障るのだろうか…
みんなが自分の事を見ているような気がした。
…一般人は入店できないのか?
でもそんなことは店の前に書いてなかったし
なんなんだよ…
ちょっとムカついて頬が膨れる。
店の中ほどまで入ると
”誰かお探しですか?”とフロアスタッフらしい人に
声をかけられたが”大丈夫です”と言いながら
手をスッとあげその後の言葉を遮った。
…そうだ。あいつ…どこにいるんだ?
物珍しさでついいろいろなものに気を取られ
目的を忘れるところだった。
急がないと。
もしかしてすでにもう…
それは絶対だめだ。
ちょっと焦りながら人を避けながら
さらに奥へと進んだ。
…いた。
間違いない。あいつだ。
一度見たら忘れない後ろ姿が目に入った。
呼吸を整えながら静かに近づく。
その間もなぜか”一杯どうか”と何人かの客に声を掛けられ
中にはグラスを差し出してくれる人もいた。
なんなんだ?
この店の客はみんなMr.親切マンなのか?
そんな事思いながらも
俺はだんだん目の前に大きくなってくる
あいつの背中しか見てなかった。
この店はダイニングタイプのようだが
カウンター周りイスはなく
客はたったまま思い思いのスタイルで
グラスを傾けていた。
あいつはカウンターに肩肘を突き
ちょっとくつろいだ雰囲気でグラスを傾けていた。
そして一人ではなかった。
一緒にいたのは男の俺でも二度見するほどのヤツで
端正な顔立ちのビジネスマンタイプのヤツだった。
なぜかイラッとしてカッと頭に血が上るのがわかった。
…クソッ
一瞬ためらって足が出なかったが
あいつと楽しそうに笑って話をしていた男が顔を上げ
俺と目が合い、にっこり笑いかけてきた。
カッと頬が熱くなるがそれを悟らせまいと
左足を一歩前に出し歩きだした。
あいつは…
俺に背を向けたままのあいつは
手元のスマホの画面をタップした。
俺の手の中のスマホが揺れ
びっくりして一瞬足が止まった。
通知を見ると…やっぱり…
…クソッ
カウンターに肩肘ついてちょっとしなだれてた感じで
目の前の男に笑いかけている背中のオーラがハンパない。
遠目でも上等だと見て取れるシャツのその下の
骨格を想像するとそれに触れたくなった。
ちょっと浮き出ている肩甲骨をガバッ!っと抓んでやりたい。
ふいに目の前に差し出されたグラスを受け取り
その中身を一気に喉に流し込んだ。
何も食べ物が入っていないすきっ腹な胃が
チリチリと焼け付くようだった。
…え?なんだこれ
俺はグラスを目の前に掲げ眺め、
底に少し残った液体をクンクンとかいでみた。
その匂いだけで頭がクラッとする。
血液が体中を一気に駆け巡る。
頭をブンブンと数回振り
前を見るとグワンと目の前の風景が揺れた。
…ん?
もう一度頭を左右に振った。
肩に誰かの手がかかった。
何か言ってるようだったがその手を振り払ってムシした。
そして、とにかくあいつにひと言言ってやりたくて
触れたくなるその背中の前まで近寄ってスッと大きく息を吸って
その膝裏を狙って思い切って自分の膝を突き出した。
そう。
いわゆる”膝カックン”ってやつだ。
不意をつかれた目の前のヤツは思いっきり膝を折りバランスを崩し
手に持ったグラスの中身をシャツの胸元にぶちまけた。
ヤバッ…
口を大きく開け、それと同じぐらい目をまん丸に見開いて
振り返り信じられないという顔で俺の顔を見上げた。
いつも余裕たっぷりな態度にイラついてた俺は
この時ぞとばかりに目の前の間抜け面を指をさして笑ってやった。
『キュ、キュヒョナ?』
そいつは俺の名を呼んだ。
チッ…俺の名を気安く呼びやがって…
急に腹ただしさの方が上回ってきた言葉が溢れ出す。
「おい!どういうつもりなんだよ!」
『え?』
「あんた、あいつになにする気だよ!」
『…あいつって?』
「なんだよ!とぼける気かよ!」
『……』
「リョウクだよ。リョウク!」
『リョ…ウク…くん?』
「そうリョウクだ!絶対ダメだからな!!」
『…一体何を言ってる…「あんたになんか絶対手は出させない!」んだ?』
俺は人差し指をビシッ!とこいつの鼻先に突き出したやった。
…き、決まった
そう思ったら笑いがこみ上げてきておかしくてたまらなくなってきた。
心臓とこめかみがリンクしてドクドクト脈打って頭に響く。
だんだん膝に力が入らなくなって来た気がする。
『キュヒョンいったい何を…』
「とぼけるなよ!なんなんだよこれ。
俺がちょっと無視してたら”じゃあリョウクと”って
なんだよこれ!じゃあリョウクとって…
リョウクはダメだ!ぜったいダーメー!!!」
そう言って俺の前で腕をクロスさせバッテンを
目の前に突き付けてやった。
「どこにいるんだよ。」
『誰が?』
「リョウクだよ!連れて帰るから。早く出せよ!!」
あくまでもとぼけるこいつがものすごく憎たらしく
思わずその胸元をむんずと掴んで引き寄せる。
『そんなにリョウクが大事か?』
掴みかかった俺の腕に手を掛けながら
目の前のヤツがそう言った。
何言ってんだよ。
当たり前じゃないか!なのに…
リョウクに俺にしたようなことしようとするなんて!!
あの日の俺たちが頭に浮かんだ。
ダメだダメだ。
こいつにあんなことさせたらぜーったいダメだ。
リョウクが壊れちゃう!
目の前のヤツとリョウクがベットの中で…
つい思い浮かべてしまう。
「あぁ!大事さ。そんなこと…お、俺のリョウクに手を出すな!!」
『お前たち…ほんとにそうな「ギュギュ~!!来てたの~?!」…のか?』
ドンッ!と後ろから誰かがぶつかってきて
背中に頬を寄せて俺に抱き着いてきた。
「よかったぁ~」と抱き着いてきたのはリョウクだった。
憎たらしいヤツに掴みかかる俺とその俺に抱き着くリョウク。
…なに?この展開
一瞬固まった俺。
「おいおいおい…なんだなんだ?」
聞いた声だった。
「へ~3Pか?」
その声に顔を上げるとニヤリと笑ったヒチョルさんが
俺たちを面白そうに眺めていた。
cont
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もうちょっとお付き合いを…
ペコリ(o_ _)o))
その声に顔を上げるとニヤリと笑ったヒチョルさんが
俺たちを面白そうに眺めていた。
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もうちょっとお付き合いを…
ペコリ(o_ _)o))