(kyuhyun)
「あぁ…もうダメだ…」
「あぁ…」
『あぁ…』
捨て台詞と共にその場を立ち去るユジンの背中をみながら
三人同時にうなった。
「まぁ…後で花でも送っておこう。」
ダニエルは両手を広げ肩をヒュッと竦め、小首をかしげた。
その姿がヒョンにそっくりだった。
それに気づいた俺はそんな自分に苦笑した。
『大丈夫?』
「え?」
『そんな顔して…ユジンなら…心配ない。』
「あぁ…あ、う、うん。そうだね…うん。それは大丈夫…それはね…」
『ん?』
「あ、俺…ちょっと…」
そう言いながら俺はドアの向こうをスッと指さした。
『あぁ、わかった。』
そう言いながらヒョンがにっこり笑いかけた。
その笑顔はやっぱり抜群にかっこよくて
ここにいる誰よりも一番だと思った。
(siwon)
『俺も一緒に行こう…』
そう言おうとした時すでに歩き出したキュヒョンにダニエルが続いた。
そっと背中というか腰というかに手を添え
エスコートするかのようにふるまった。
人ごみの中をに紛れるのをシウォンは
顎をギュッと引き締めこぶしを握り見送って。
☆
「どうした?やっぱりこういうところは苦手かな?」
ダニエルさんの手が背中から肩へと回った。
「え?」
その手が置かれた肩に重みを感じる。
「なんだか…楽しそうに見えない。」
その手が腕をなでる。
「あ…えぇ…出なくていいなら出たくないですね。
でも…まぁ…仕方ないですね…」
俺は立ち止まった。
「そうか。まぁ、楽しい付き合いばかりではないからな。」
ダニエルさんが俺の正面に回って床を見つめる俺を見つめてる。
「えぇ。まったく…」
「何も聞かなくていいのかな?」
「え?」
「いいの?」
「…?言ってる意味が…」
「大丈夫。シウォンとはなにもない。」
「・・・・・」
「ただ…子供の頃のちょっとした…ん~
わだかまり?そう、わだかまりが残ってるだけだ。」
「……別に俺は…」
「まぁ、余計なお世話だったかな。」
「いえ…。」
「ダニエルさんがシウォン先生を…ヒョンを構うのは
そのせいですか?」
「あぁ。ムキになるあいつを見てると、つい懐かしさでね…」
「ひでっ…」
「誰よりも孤独で、誰よりも繊細で…」
「えぇ…」
「気高く、しかしおごらず…」
「えぇ…」
「そして…決して君を裏切らない。」
「…はい。」
「君のためならシウォンはすべてを擲つだろう。」
「俺にそれだけの価値…あるのんですかね…」
「価値があるかどうかは相手が決めることだ。」
「わかってるんですけど。でも…」
「大事にしてやってくれ。」
「ダニエルさん…」
「キュヒョン。君だからこそ…なんだ。」
「随分ひねくれた愛情表現ですね。」
「あぁ…大人は何かとめんどくさい。」
「大人…でしたっけ?」
「ははは…だから俺も君が好きなんだ。」
「ダニエルさんが?俺を?」
「あぁ。知らなかったか?」
「えぇ。だって俺なんか…珍しい人種はヒョンだけかと思ってた。」
「君は自分の事を知らな過ぎる。」
「そうですか?」
「そうだ。」
「変なの。」
「キュヒョンくん。何か困ったことがあったら…」
「大丈夫です。あの人は、俺が守りますから。」
「キュヒョンくん…」
「あの人がもう俺なんかいらないって言うまで
一分でも一秒でも長く側に居続けてやって、
俺が守りますから。」
「キュヒョンくん…それ、あいつに言ったことある?」
「言うわけないじゃないですか!
そんなこと言ったら…
俺、きっと外出してもらえない。
そんな怖いこと言う訳がないですよ。」
「そうか…あぁ…シウォンならそうだな。
しかし、君の愛情表現も随分ひねくれてるんじゃないか?」
ダニエルさんが声を出して笑った。
そして俺の手を取り、手の甲に敬意のキスをした。
俺は慌てて手を引込めようとしたがもっと強く握られた。
「え…あの…ちょっと…あの…」
バンッ!!
いきなり会場のドアが開いて
中からホテルのスタッフらしき面々が駆け出してきた。
ビックリして手を引っ込めようとしたが
ダニエルさんは俺の手を握ったままやはり会場の方を見ていた。
…医者を呼んで
…救急車を
…支配人を
口々にそんなことを言いながら右往左往している。
「急病人のようだな。」
「えぇ。そうみたいですね。」
俺たちは同時に会場の方へ歩き出した。
中に入ると会場の中ほどに人だかりができていた。
女の人の鳴き声と叫び声が聞こえる。
人垣をかき分けてその人だかりの中心をのぞくと
誰かが倒れていた。
そして、その傍らにヒョンがいてその人に向かって呼び掛けていた。
「先生!」
『突然倒れたらし。頭も打ってるかもしれない。』
そう言いながら全身状態をチェックするヒョンは
さっきまで俺を優しく、不安気にみていたヒョンとは
思えない程、目つきが変わった。
かなり状態がよくないんだと思う。
『ダニエル!車は?』
「エスカレードだが」
『よし。救急車は待てない。自分で連れて行く。
車を出してくれ。』
「え?俺の車で?」
『そうだ!時間がない。早くしてくれ。』
「先生!痙攣です。」
『ダニエル早く!車を、回してくれ!』
「あぁ、わかった。」
ダニエルさんが足早に出て行った。
「先生。どうしますか?」
『このままうちの病院にとにかく運ぶしかない。』
「心マ続けますか?」
『あぁ。続けていく。』
「変わります。」
『あぁ、頼む。』
ヒョンは連れと思しき女の人に何かを聞いていた。
『とにかくここじゃ何もできない。移動する。』
「はい。」
…すみません!どいてください。
…通りますよ
そして…
俺たちを乗せてダニエルさんの車は
静かに会場を後にした。
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今年もどうぞよろしくです
ペコリ(o_ _)o))