「で?」
『で?…あっつうぅぅ…』
「見事にやられたな。」
イトゥクが手を差し出してくれた。
『あぁ。いたたたたたた…ふぅ…』
その手をかりながらそっと立ち上がった。
「キュヒョン。お前も思い切りやったなぁ。
何をそんなに怒ってるんだ?」
ヒチョルがわかりきったことをあえて聞く。
「なにって…だって、ヒョンが…みんないるのに…」
キュヒョンは顔を真っ赤にして手を振りかざしながら怒っている。
キュヒョンのかわいらしさに思わず抱きしめてキスをしてしまった。
そう周りのみんななんて目に入らなかった。
どうせ俺たちの”絶交”を面白がってる輩ばかりだ。
だから俺は遠慮なくキュヒョンの唇を味わった。
が、一発食らった。
最初抵抗したキュヒョンが俺のキスでトロトロにトロけて
そのまま一気に仲直りしようと思ったのに誤算だった。
いきなりキュヒョンが俺のみぞおちに一発パンチを繰り出した。
そのパンチはクリンヒットして俺はその場に崩れ落ちた。
俺とキュヒョンのキスシーンを面白がってみていたみんなが
一斉に声を上げた。
”ほーらやられた。”
…なんだよ。
楽しませてやったのに。
油断した。
今日のパンチは本当に効いた。
一瞬息ができなくて四つん這いになったまま床をのた打ち回った。
イトゥクの手を借りてソファーにドサッとかけ
みぞおちを擦りながらキュヒョンを見た。
心配そうに俺を見ていたが目があった途端
プイッ!っとそっぽを向いた。
…まったく。うちの天使は意地っ張りなんだから
思わず顔がニヤケる。
「なんだ?お前何ニヤケてるんだ?気持ちわるいなぁ。」
ヒチョルが見逃さずつっこんできた。
『いや、うちの天使は本当にかわいいなぁ~って思ったら…』
「はぁ~?」
「出た~!!」
ウニョクとリョウクが呆れ顔で笑った。
「お前さ、よくもまぁそんな真顔でそんな恥ずかしいこと言えるよな。
ほんとうらやましいよ。お前のその性格。」
『え?言ってる意味が…』
「おい、キュヒョン。
こんな神様みたいなやつそうそういないぞ!
いい加減機嫌直せって。」
そう言いながらヒチョルはキュヒョンの腕を
ポスンと拳で叩いた。
「俺は…悪くない…」
キュヒョンがヒチョルをクッとにらみながらそうつぶやいた。
「だいたい、何が原因なんだよ。聞いてやるから話してみて」
ウニョクがそう言ってキュヒョンの肩に手を置き引き寄せた。
キュヒョンは頬を膨らませたままウニョクにされるがままだった。
「だって…ヒョンは俺の気持ちなんてどうでもいいんだ。」
キュヒョンがそう言ってまたそっぽを向く。
「そんな…ふざけんなよ。
先生、いつもお前のことしか考えてないじゃん。」
ウニョクが呆れ顔でキュヒョンを見つめた。
「あぁ~やめ、やめ、やめ。付き合っちゃらんねぇぜ。」
ヒチョルがそう言いながらキュヒョンにデコピンをした。
「痛っ!ちょっとヒチョル先生、何だよ?!なんでデコピン?!」
「お前の意地っ張りっぷりに敬意を表しただけだ。気にすんな。」
「なんですかそれ。バカばかしい。」
『キュヒョナ。もうそれくらいで…』
俺がそう言うとキュヒョンの顔がみるみる険しくなり
”しまった。”と思った時にはもう…
キュヒョンが俺に向かって突進してきた。
俺は反射的に立ち上がり、そのキュヒョンを胸で受け止める形になり
キュヒョンに触れた。
するとキュヒョンは”…か…ょんのばか…”と俺にだけ聞こえる
小さな声で繰り返しながらギュッと握ったこぶしで俺の胸をたたき続けた。
さっき食らったみぞおちへのパンチがまだ効いてる上、
胸を何度も叩かれ、突き飛ばされ、さすがの俺も支えきれず
そのままキュヒョンを抱きかかえたままソファーに
ドサッと腰をおろした。
「なんでダメなんだよ…」
そういいながら尚もこぶしで叩いてくる。
「どうせ俺なんか役にもたたないし、邪魔なんだよね?
ヒョンにとって俺なんか…俺がいると困ることがどうせあるからだよね。」
キュヒョンが尚も覆いかぶさって俺に迫ってくる。
『キュヒョン。だから違うって…違うって言ってるだろ!』
キュヒョンの腕をガッチリと掴みキュヒョンを胸に抱きしめた。
「おい、お前たち、いったいなんなんだ?
おい、キュヒョン。いったい何の話してんだよ。」
黙って俺たちを見守っていたヒチョルがそう聞いた。
『いや、キュヒョンが派遣看護師に登録するって…
一緒に行くって言い出したんだ。』
「へぇ~…そうか、待ってるより一緒に行くってか。」
「え?キュヒョンそうなの?そんなこと考えてたの?」
「あぁ。まぁ、流れ的にそんな感じだよな。」
みんなが妙な納得を見せた。
「でもだからってなんでこの騒ぎになるんだよ。
意味わかんねーぞ」
ヒチョルが尚も追求してくる。
「だって、ヒョンがそれはダメだって。」
「え?先生なんで?いいじゃん、キュヒョンが行くって決めたんなら」
『ダメだ。ダメだダメ。』
俺は慌てて否定した。
「ほらね。きっと俺が行くと困ることがあるんだよ。
俺がいちゃ迷惑ってことなんだ。」
「え…ギュギュ、それは極端だよ…」
「え?極端?なにそれ。」
「だって、ダメって言われたからって大騒ぎして…
女々しいじゃん。」
「リョウク、お前どっちの味方なんだよ!」
「え?どっち?どっちでもないよ。
でもシウォン先生に同情しちゃうな~いちいちこんな拗ねてるんじゃ。」
「す、拗ねてなんかないよ。なんだよ、バカにすんなよ!」
「え~、だって~、みんなに聞いてごらんよ~
みんなそう思ってるよ~絶対!」
「おい、おいリョウク!その辺にしとかないと…
あっ、キュヒョン!やめろよ!リョウクは悪気ないんだから!!」
キュヒョンがいきなり立ち上がり、リョウクに突進していった。
「おい!シウォン!どうにかしろよ!!」
『キュヒョン、ほらやめなさい!落ち着きなさい!』
俺の凛とした声にキュヒョンが固まった。
そして俺をグッと見つめた。
『何も困ることなんかないから。本当にないから。』
「じゃぁ…なんで…」
消え入りそうな声でキュヒョンが俺に聞く。
『これは周りの環境の問題だ。』
「はぁ?」
『いいか、あのな、派遣されて現地に行くのはいいんだ。
今後、安全面は保障されてくだろうし。』
「……」
『ただな、危険はそこじゃないんだ。』
「はぁ…」
『いいか、任命を受けて、みんな志高く現地にいくんだ。』
「うん…」
『でもな、そこには娯楽というものがほとんどないんだ。
若い医師や看護師が昼間のうっぷんを晴らすすべがないんだ。』
「あぁ~、シウォンお前…ははは…お前そんなこと…」
「あぁ~、そこかよ。お前なぁ~」
ヒチョルとイトゥクにはここまで言えばわかったらしく
笑い出した。
ドンへに至っては腹を抱えて笑っている。
意味が分からないのは目の前にいるキュヒョンとウニョクだった。
さすがのリョウクは顔を赤くして手でパタパタと仰いでいた。
そして目があったのでウィンクを返すと”あっはっは~”と笑いだした。
「え?何々?なんなの?なんでみんな笑ってんの?」
ウニョクがみんなをキョロキョロ見渡した。
「そんなの…そんなの俺、ぜんぜん大丈夫だけど。
娯楽なくたってゲーム機さえあれば…もともと…」
『いや、そうじゃなくて…そうじゃないんだキュヒョン。』
「先生、ぜんっぜん意味わかんない。俺。」
そういうウニョクにリョウクが何かを耳打ちした。
「え?何…え?えっ?えーっ??エッチし放題???
ないそれー!!…えー!!」
ビックリしたウニョクが目を真ん丸にして思わず叫んだ。
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えっと…
長くなってしまたので
2回に分けてアプです
ペコリ(o_ _)o))