siwon:
ブォォォォ
カチッ
「かわいた?」
ソファーに座った俺の足元でキュヒョンが顔をちょっと上げ俺を見た。
『あぁ。いつも通りふわふわキュヒョンの出来上がりだ。』
定位置でのいつもの様に髪を乾かしてやった。
乾かしたてのキュヒョンは本当にいい匂いがした。
髪に顔を埋め大きく息を吸うと俺の細胞の一つ一つが
歓んでいるのがわかる。
バスルームで取り乱した俺だったが少し落ち着いた。
俺は本当にどうしたんだ。
自分で自分をこんなにコントロールできないことって久々だった。
「いつか天に召されるとき…」
というキュヒョンの言葉に動揺してしまった。
ほんとうに目の前からいなくなってしまうんじゃないかと
恐怖感が込み上げてきて
『ダメだ。俺より先に天に召されるなんて許さない!』
そう言って俺はキュヒョンにすがりついてしまった。
しばらく戸惑っていたキュヒョンが口を開いた。
「ねぇ、シウォナ。髪…乾かしてくれない?
俺が風邪ひくとヒョンもひいちゃうよ…でしょ?」
そういって俺の顔を覗き込みキュヒョンがにっこり笑った。
『…そうだな。それは困る。』
フッと力が抜けた俺は床に転がったシャワーヘッドを拾い上げ
お互いを流し合いっこしてバスルームを出た。
キュヒョンしかなかった。
「太陽は西から昇って東に沈む」
今キュヒョンがそう言ったら俺はそう信じる。
「神様はいない。」
そう言われたら…
今の俺ならそれを信じてしまう。
でもそれはありえないことだろ?
この俺が神を信じないなんて。
でもそのありえないことが起きている。
自分がなぜそうなったのか…
イカレテル。
そんな言葉がピッタリだな。
キュヒョン。
お前はいったい俺に何をした?
シウォンは頭を振りながらこめかみを押えて目を閉じた。
「ヒョン。はい。」
目の前にワイングラスが差し出された。
「少し飲もうよ。」
『あぁ…ありがとう。』
グラスを受け取りながらポンポンと自分の隣りをたたいて
そこに座るよう促した。
俺の隣に静かに座ったキュヒョンと2人でグラスを傾けた。
『さっきはごめん…』
「ん?なに?」
『さっき、バスルームで…声を荒げてしまった。』
「あぁ…なんでもないよ。あれくらい。
ちょっと…びっくりしたけど…」
キュヒョンはそう言うとクツクと笑った。
そして頭を俺の肩にコトンと落とした。
「こうやってまったりするの…久しぶりだね。」
『ん?あぁ。そうだな…』
「しっかしびっくりしたよなぁ~あの日。」
『あの日?』
「朝起きたら幻だって思ってたヒョンが本物だったんだもの。」
『あぁ、俺が帰国した日…』
「うん。まさか帰ってくるなんて思ってもいなかったからさ。
心臓止まるかと思ったよ。」
何がおかしいのかキュヒョンがクスクス笑っている。
俺はキュヒョンの頭をくしゃくしゃとしてその髪にキスをした。
「ヒョン、ごめん…」
しばらくの沈黙の後、キュヒョンいきなり謝った。
『……何?』
「俺が情けないせいでヒョンが…困ってるよね…
今度からもっと気を付けるから。」
『……』
「飲んで、酔って、あんな情けない姿見せて…
悪態までついた…みたいだし。」
『キュヒョン…何言ってる…んだ…』
「俺が情けないからヒョン…本当は呆れ…」
『キュヒョン…』
「仕事の邪魔するなんてほんっと俺さいて…」
『キュヒョン!!』
「え?何?」
『お前、いったい何言ってるんだ?』
「…何って?いや、だから…」
『……』
「ヒョンが安心して仕事できるように俺、もっとしっかりするから。」
『……』
「俺、ひとりでいるのに慣れてて、ヒョク以外の人と
一緒にずっといることなんて本当になくて、
ひとりで平気だったんだけど…」
『……』
「でもヒョンと暮らし初めて
一緒にいるってことが、なんだか普通になってて
ヒョンがいるのが当たり前になってて…」
『……』
「当直とかですれ違う事はあっても病院行けば
ほら、いつだって顔見られるでしょ?」
『あぁ…』
「なのに、まさかいきなり連絡も取れなくて、
全く何してるか分かんない日がいきなり続いたから
俺、そう言うの全然平気だったはずなのに…」
『……』
「なんか、こう、摑まるものがなくなっちゃたっていうか…」
キュヒョンの声がだんだんと小さくなり
凭れかかってくる体の重みが増してきた。
「自分がこんな情けないやつだったなんて…
ヒョン本当にごめん…頼りなくてごめん…」
そう言いながら膝の上に崩れてきたキュヒョンは
吸い込まれるように寝てしまった。
キュヒョンの手からグラスを取り、テーブルの上に置き
膝の上に乗せたキュヒョンの髪をかき上げ、指を絡めた。
本当に愛しい。
ただただ愛おしい。
胸に激しい思いがこみ上げる。
俺は上を向き熱くなる目頭をそっと押えた。
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間が空いてしまったのでお忘れでしょうが…
まだ、ガタガタしてます(笑)
お互い相手を思うあまりすれちがってしまう…
ありますよね?
でも、お互いのつながりがもっと強くなる
すれ違いであってほしいなぁ…