「あぁ~、ジンラクさんったらぁ~ヒョクチェのこと好きなんだぁ~」
リョウクの無邪気な一言でその場が一転した。
「え?俺?なにそれ!」
ウニョクがびっくりして自分で自分を指さした。
ウニョクがまず声を上げた。
…おいおい。そんな目を見開いて…目が落っこちそうだぞ。
「リョウガ!何言ってんの?」
キュヒョンがびっくりして口を塞いだ。
が、”離してよぉ~”と言いながらリョウクがケタケタ笑う。
心許なげに見えて実は鋭い。
「えぇ。そうですよ。俺はウニョクくんが好きですよ。
電話でしか話したことはなかったが、想像していた以上だった。
いつか食事でも…と思ってはいたんだけど。
今日偶然会って…核心したとこだよ。」
ヒュ~
色男のヒチョルが思わず口笛を吹いた。
「ヒョク~ヒョクはどうなの?ジンラクさんのこと、好き?」
「バカ、リョウガ!何聞いてんだよ!」
突然訳のわからないことを言い出したリョウクを
キュヒョンが羽交い絞めにした。
…そうだよ。リョウクくん。
「え?俺?いやぁ~、好きも嫌いも今日あったばかりだし…
それにジンラクさんふざけ過ぎですよ。
こいつら面白がってドンドン話膨らんじゃうから。」
「いや、俺は、ふざけてなんかいないけど。」
そう言いながら向こうのテーブルから様子を伺う
イトゥクをじっと見つめウニョクに視線を戻しにっこり笑った。
「え?いやぁ…はぁ…これって…」
ウニョクは周りを見回しながら頭を掻いた。

「あの…ジンラクさん。いったいこれは…俺…えっと…」
結局ウニョクとふたりで向き合って席に座って
話しをすることとなった。
「あぁ。何だかすまないね。俺もちょっとこの展開はびっくりだな。」
「すみません。みんなが変なこと言って。
でも優しいですよね。ジンラクさん。」
「え?やさしい?」
「えぇ。場がしらけないようにあいつらに話合わせてくれて。
ホントすみません。」
「う~ん…そう言うわけじゃ…まぁいっか…。
俺が君に好意を持ってるのは本当だよ。あながち間違ってはいない。」
「え?」
「まぁ、あったその日にそんなこと言う気はもちろんなかったかけど、
なり壱岐でまぁ、仕方ないか…」
「はぁ…えっとそれは…」
「俺は君が気に入ってる。っていうよりどうやら好きみたいだ。」
「………っえ?」
「驚くよな。たしかに。」
「えっと、あの。その…えっといや、それはそれで嬉しいけど…
って、え?俺?キュヒョンとかリョウクとかじゃなくて俺?」
「そう。君。」
「はぁ…それはまたジンラクさん…もの好きな方ですね。」
「物好き?」
「そうですよ。俺なんて…そこらへんにゴロゴロいる輩と一緒ですよ。」
「ねぇ?君それ、本気で言ってる?」
「えぇ。もちろん。」
「あのさぁ。君はもっと自分の事自覚した方がいいと思うよ…
確かにキュヒョンくんとかリョウクくんとかと一緒にいると
なかなかわからないだろうけど…」
「はぁ…」
「あそこにいる彼。君の恋人?」
「えっ?!あっ、えっ?!」
「さっきから俺はものすごーい目で見られてる。
視線で人を殺せるなら俺はとっくに焼き殺されてるな。」
「視線…?焼き殺される…?」
「その時計も彼から?」
「あっ、えぇ…はい。」
「そうか…」
そのまま2人黙ってしまった。
どのくらい時間が経っただろうか。
先に口をきいたのはウニョクだった。
「あの…ジンラクさん。俺…その…」
「あぁ。わかってる。俺のことは気にしないでくれ。」
「あの、すみません。本当に。」
何も悪くないのそう言いながらウニョクが頭を下げた。
「全く君は…」
ウニョクが申し訳なさそうにこちらを見た。
その肩越しにウニョクの恋人だというイトゥクが見えた。
ほんとうはすべきじゃないんだろうけど…
「ウニョクくん。怒らないでくれよ。」
「はい?何を?」
そういいながら俺の目を見たウニョクの首の後ろに手を回し、
グッとひきつけてその唇を塞いだ。
「きゃぁ~」
「うっそ?!」
「マジか!!」
「あ~あやっちゃった」
周りでみんながざわめいたのが
分かったのはほんの一瞬だった。
ウニョクの唇の感触に心奪われた。
ほんの数秒だったが心奪われた。
が、これで諦められる。
そう思った瞬間、俺の目の前からウニョクが消え去り
”あっ!”という間もなくわかったのは頬に感じた鈍い痛みだった。