ウニョクが部屋を出て行ったあとも
シウォンはソファーに座ったまま動かなかった。
いや、動けなかった。
いろいろな感情や思いが鬩ぎ合いをしていて、
自分が今、
何をどうしたらいいのかが見えてこない。
あまりにも無防備なキュヒョンに激怒すればいいのか、
それともどこかに閉じ込めておけばいいのか。
自分が今、
何をどうしたらいいのかが見えてこない。
あまりにも無防備なキュヒョンに激怒すればいいのか、
それともどこかに閉じ込めておけばいいのか。
いや、そんな権限や拘束力は自分にはない。
じゃあ、どうなっても仕方ないと
あのまま放っておいけばよかったのか。
いや、それは絶対できない。
人のものになるのを傍観してるつもりはない。
ヒチョルが偶然居合わせなかったら
どうなっていたかと考えると、首筋を冷たい汗が伝う。
キュヒョンを他の誰かに奪われるなんてことがもし起こったら・・・
キュヒョンを他の誰かに奪われるなんてことがもし起こったら・・・
何を仕出かすか自分でも想像ができずそんな自分が怖くなった。
でもそんなことをキュヒョンが望むわけはないし・・・
でもそんなことをキュヒョンが望むわけはないし・・・
結局自分はキュヒョンを傷付けてしまうのではないか。
考えれば考えるほど湧き上がるやり場のない感情に苛まれていく。
☆
不意に目が覚めた。
自分でもびっくりするぐらい弾けるように・・・
一瞬自分がどこにいるのかが分からなかった。
”え?え?え?何これ?”
自分がベットの中にいるとわかるまでに要したのは数十秒。
なんでここにいるのかと考え始めるまでに数十秒。
じゃあ、誰といるのかと考え始めるまでに数十秒。
それから、今一体どうなっているのか確認するまでに数十秒。
結局、なにがなんだかわからなくてパニックを起こし、
”うわぁー!!!”
と叫びだすまでに数分の時間を要した。
慌ててベットから飛び出そうとして足を下したが
その足に力が入らずガクッと膝が折れ、バランスを崩し
手が出たがその手にも力が入らずそのまま頭から転げ落ちた。
”ちょっ・・・なに?なに?なに?なに?なに?”
自分の体のコントロールが効かなことにさらにパニックに陥った。
キュヒョンはやっとのことで体を起こし、ベットによりかかり思わず頭を抱えた。
とにかく、とにかく思い出さなくちゃ・・・
俺、何してたんだっけ?
確かジョンファさんと一緒だったはず・・・
あれ?ジョンファさんは?
いつものあの店で確か、ふたりで飲んでた・・・はず・・・
そういえば・・・
なんだかんだとジョンファさんが言ってたような・・・
”思った通りだな・・・君・・・”
”君、ほんといいよ。”
”最高な気分にさせてあげるよ”
キュヒョンは記憶がクリアになっていくにつれ、
思い出されるジョンファの行動が
要はそういう事だったのかと気が付き始めた。
うそ、うそ、うそ、うそ、うそー!!!
どうしよう、どうしよう、どうしよー!!!
え?ジョンファさんは?
え?まさか俺、もう・・・
いや、服はそのままだし・・・
そうだ。
うそ、うそ、うそ、うそ、うそー!!!
どうしよう、どうしよう、どうしよー!!!
え?ジョンファさんは?
え?まさか俺、もう・・・
いや、服はそのままだし・・・
そうだ。
連絡しなくちゃとiPhoneをさがしたが、
それもどこにあるのかわからない。
落ち着け。
落ち着け、俺。
って、そんなの無理!
心臓がバクバク言って、口から飛び出しそうだった。
力が入らない手足を投げ出し、キユヒョンは途方にくれていた。
いくら考えてもやっぱり今の状況が全くわからなかった。
どうしよう、
どうしよう、
どうしよう・・・
頭を思いっきり振って意識をはっきりさせようとしたが
反対にクラクラして目が回ってしまい目をつぶったままじっとしていた。
ガチャリとドアの開く音が響いた。
暗いこの部屋と違ってドアの向こうの光が差し込んできて
そこに誰かが立っているのは分かるけれど
キュヒョンにはそれが誰かは分からなかった。
え?ジョンファさんなの?
逃げなくちゃ・・・
でも体が動かない・・・
その人物が静かに近づいてくる。
先生!
助けて先生・・・
情けないけれどキュヒョンは目をギュッとつぶり、
身を硬くし、シウォンの名を心の中で呼んだ。
目の前にその人が立っているのを気配で感じた。
”大丈夫か?”
聴きなれたその声はジョンファのものとは違っていた。
”え・・・?”
目を開けると目の前にシウォンの顔があった。
ビックリしたキュヒョンがポカーンとシウォンを見つめた。
シウォンはそれ以上何も言わずその場にしゃがみ込むと
キュヒョンの手を取った。
キュヒョンはビクリとして手を引っ込めようとしたが
しっかりつかまれて脈を取られた。
ドキドキ胸が高鳴る
体の中心が熱くなる
シウォンに触れられ自分の体が
震え始めているのを感じてどうしていいのかわからない。
『脈が速いな・・・まだ効いてるか・・・』
シウォンの低音のよく響く声が耳に流れ込んでくる。
その声にゾクリと鳥肌が立つ。
「なんでここにいるの?ジョンファさんは・・・?」と言うのが精いっぱいだった。
その名前を口にしたらシウォンの鋭いまなざしで制された。
シウォンが不意に手を伸ばし頬に触れられた。
また体が勝手にビクッと震える。
そして、首の後ろが泡立つのを感じる。
腰の辺りが重苦しく、中心が張りつめてくるのを感じたキュヒョンは
それを隠そうと膝を立てようとするがうまく動かせない。
”手を貸そうか”と言われたが何でもないと意地を張った。
しかし、どんどん熱くなる体にどうしていいか分からず
思わず情けない声で”先生”と呼ぶとギロリと睨まれた。
こういう時はそう呼んじゃダメだったと思い出した。
”ふたりの時は何て呼ぶんだっけ?”
”・・・ヒョン”
”それと?”
”・・・シウォナ”
恥ずかしさでシウォンの顔から視線をはずし横を向いたまま答えた。
”キュヒョナ・・・”
そう優しく呼ばれてまた体がビクッと震えた。
そんな自分の反応に、恥ずかしさと戸惑いで目じりに涙が溜まってきた。
ねぇ・・・シウォナ・・・
怒ってる?
”ごめんなさい・・・”
思わずそう口からこぼれた。