「おい!シウォン。」
キュヒョンを抱き上げ、出ていこうとするシウォンにヒチョルは声を掛けた。
『なんだ。』
ピタリと足を止め、振り返らずにシウォンは答えた。
「こいつ、どうする?」
『どうでもいい・・・お前にまかせる』
「わかった。」
『じゃ。あとはよろしく・・・』そう告げると、また歩き出した。
「おい、シウォン。お前大丈夫か?」ヒチョルが声を掛けた。
『俺?どうかな・・・』
静かに微笑みながらポツリと一言告げると
キュヒョンをもう一度しっかり抱きかかえ歩き出した。
決して小柄ではない・・・
はっきり言って大柄なキュヒョンは決して軽くはないはずだが
そのキュヒョンを抱えて歩くシウォンの足取りはとてもしっかりしたものだった。
無意識なのだろうが、キュヒョンがシウォンの首にしっかりしがみついている。
その姿を後ろから見ていると、なんだか胸を締め付けられる思いがして
ウニョクは歯がゆい思いでいっぱいだった。
”お前、いったい何やってんだよ!”と今すぐキュヒョンを怒鳴りつけたいくらいだった。
自分でさえそうなんだから、シウォンはもっと怒ってるはずなのに
何故かシウォンは何も言わず、とても冷静に見える。
ウニョクはそれが不思議で仕方なかった。
キュヒョンが出かけた後、その後をつけてカフェに行ったときは
キュヒョンの一挙一動にバカみたいに騒いでいたのに、
途中でいきなり”帰ろう”と言い出してその場から離れてしまった。
車の中でもずっと黙ったままだった。
無防備であまりにも天然なキュヒョンにとうとう愛想つかしたのか?
キュヒョンに向けた静かな笑みが、なんだか反対に不気味だった。
エレベーターに乗り込み、用意された部屋ヘ向かう間も
しっかりキュヒョンを抱きかかえ、その顔を何とも言えない表情で
見つめているのをただただ見ているしかないウニョクだった。
『ウニョク。本当に悪いな付き合わせて・・・』
ベットルームから出てきたシウォンはウニョクに頭を下げた。
「ちょ、ちょっと先生やめてくださいよ。それよりもキュヒョンは?」
ウニョクは焦りながらキュヒョンの様子を聞いた。
”大丈夫だ、よく寝てる・・・”と言うのでちょっと安心して大きく息を吐いた。
シウォンはソファーに腰を降ろし、そのまま押し黙ってしまった。

「あの・・・先生大丈夫ですか?」
『・・・・・』
「先生、俺、ヒチョル先生見てきます。あのままじゃなんか・・・先生?」
『ん?何?』
「ヒチョル先生、見てきますね。」
『あぁ・・・そうか・・・頼んだよ。』
「ヒチョル先生とチョウミにも大丈夫だと言っておきますね。」
『ん?あぁ・・・そうか・・・頼むよ』
「はい。先生・・・キュヒョン、頼みますね。」
『ん・・・?あぁ、大丈夫だ』
明らかに何かがおかしいシウォンのことが気にはなるが、
ウニョクはとにかく、いったんこの場を後にすることにした。