「す、すみません大丈夫です。」
激しく咽こんだキュヒョンが背中をさすり続けるジョンファに謝った。
「大丈夫?僕、何か変なこと言ったのかな?」
くすくす笑いながらジョンファが席に戻った。
ジョンファの口からいきなりシウォンの名前が出たので過剰反応してしまった。
別に付き合ってるのかとかそんなこと聞かれたわけじゃないけど、
やっぱり後ろめたい・・・世間一般的には大きな声で言えない関係だけに・・・
気持ちがあるからだろうか・・・
病院の中で、みんなの中でいるときはそれが当たり前だけど、
一歩外に1人で出ると、敏感になっちゃうもんなんだな・・・
そんなこと考えながら息を整え、不思議そう見ているジョンファに
にっこり微笑んで見せると"キュヒョンくんは本当に素直なんだね"といいながら、
手を伸ばしてきたかと思うと、また頬に触れられた。
キュヒョンは一瞬動けなかったが、我に返ると慌ててストローに口を付け
一気に飲み干した。
「それ、おいしいだろ?」
「えぇ。フルーツの香りがとてもいいですね。女の子が好きそうだ。」
「今度彼女と来たら奨めてみれば?きっと喜ばれるよ。」
「え?いや、だから彼女なんていないですって」
「そう?でも・・・ほら、その・・・えっと首のところ・・・」
「はぁ?」
「えっと、何ていうか・・・その、そこに、例の痕が・・・」
「・・・あと?」
「うん・・・痕」
キュヒョンが首を捻りながらジョンファの指さす首筋へと手を添えた。
「あっ!えっ?」
昨夜、シウォンに付けられた痕。目立つところはやめるように言っても
時折こうしてわざとマーキングしてくる。
だから言ったこっちゃない。見られちゃったじゃないか。
キュヒョンが赤くなったり、青くなったりあたふたしているのを見ながら、
「それ、虫刺されだ・・・なんて言って子供扱いしないでくれよ?
一応俺も大人だし・・・それくらいわかる。」
そういっておどけて見せるジョンファにキュヒョンはまたむせ返りながら
苦笑いするしかなかった。
”だから昨日ダメだって言ったのに・・・シウォナのばか・・・”
へんな汗が吹き出し背中をツタってながれているのがわかる。
「キュヒョン君の彼女は随分情熱的なんだね。もしかして、年上?」
「はぁ、いや、彼女では・・・」
どう考えても彼女じゃないよなぁ。
とシウォンを思い浮かべつつ、キュヒョンは頭をかいた。
「えっ?じゃあ、体だけの付き合いって、そういうの?それとも、
そういった相手をしてくれる所にでも通ってるとか?」
「えっ?!そ、そんなのあるわけないじゃないですか。やだなぁ~もぉ~」
「まぁ、今日の所はこれ以上追求しないでおくよ。
とにかくキュヒョンくんは周りがほっとかないって事なのかなぁ。」
「あぁ。よくからかわれてます。確かに。
俺なんかからかってもなんの特にもなんないと思うんですけどね。」
「 いや、そういう意味じゃなくて・・・キュヒョンくんのそういう所が乙女心を揺さぶるんだろうね。」
「なんですか、それ。」
「一見、落ち着いてクールそうに見えるのに、実は天然要素満載。かわいいよね、ほんと。」
「天然・・・かわいい・・・なんですかそれ。心外だなぁ。」
キュヒョンはテレ隠しにふくれて見せた。
「ほら、それ。まさか俺を誘惑してる?」
「誘惑?そんな、してませんよ。ジョンファさんこそ、天然ですよ。それ。」
「え?僕も?今のは天然使うとこじゃないんじゃない?」
「え?」
「あぁ~、本当にキュヒョンくんはいいね。いいよ、うん。」
「はぁ。」
空っぽのグラスの氷をストローでつつきながら
キュヒョンはいったいなにがいいのか訳がわからずちょっと首を傾げた。