「はぁ・・・まったく・・・」
医局へ戻るべくエレベーターに乗り込んだシウォンは大きなため息をついた。
時計を確認するともう夜中の3時を過ぎていた。
ホテルで別れた時のキュヒョンが不意に頭に浮かび、
なんだか気分が滅入ってきた。
お互いの欲情が最高潮に達しそうなところで邪魔が入り、
クールダウンするのに結構キツかった自分に比べ、
キュヒョンは至って平然そうに手を振っていた。
結局俺ひとりの空回りなんだろうか・・・
首から下げた指輪を白衣の上から無意識に触った。
キュヒョンのすべてをこの手中に抑えたいと思いながら
決してそうはできない歯がゆさを思い知らされていた。
医局のある階でエレベーターを降りた所でキュヒョンに連絡をしようと
iphoneを取りだした。
「はい・・・キュヒョンです。」
もう寝てしまっていると思っていたが2コール目で
キュヒョンの声が響いた。
『キュヒョナ・・・えっと寝てたか?』
「いえ・・・」
『そうか・・・』
「終わった?」
『ん?あぁ・・・すまなかったな。』
「ヒョンのせいじゃないじゃん・・・」
『あぁ、それはそうだけど・・・なんとなく・・・』
「ふふふ・・・なんだよそれ。」
『会いたい。会いたいよ・・・キュヒョナ・・・』
「・・・俺も。」
『え?!ホントか?ほんとにホントか?』
「なんだよそれ・・・」
『いやぁ、なんとなく・・・でも、戻れそうにないんだ・・・』
「ふーん・・・」
『ふーんって・・・それだけ?』
「・・・他になにか?」
「いや、いいんだ・・・とにかく・・・ゆっくり休んでくれ。俺も仮眠をとる。」
「うん・・・」
『声が聞けてうれしかった。』
「そう?ふーん。」
『え?』
「ヒョンはそれだけでいいんだ。へぇ~・・・」
医局の前で鍵を取り出そうとした所でキュヒョンの言葉に
ちょっと動揺して落としてしまった。
『え・・?いや、よくないよ。もちろ・・・ん・・・え?』
鍵を拾おうとしゃがんだところで目の前のドアが少しずつ開いた。
視線の先に見慣れたクツが飛び込んできた。
胸の鼓動が高鳴り、耳の奥で血が体中を巡り始めた音が響いた。
ゆっくり見上げていくと
「俺、会いたくて来ちゃったのに・・・声だけでよかったんだ・・・」
そう言って少し口角を上げて笑うキュヒョンが立っていた。
『え・・・?うっそ・・・』
シウォンはしばらくしゃがんだままで口をポカーンと開けてキュヒョンを見つめた。
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「ヒョン・・・待って・・・夜食・・・」
『ダメだ。もう待てない・・・キュヒョナを食う!』
「ばっかじゃない・・・」
『あぁ、そうだバカだ・・・』
目の前に立っているキュヒョンを認識する間しばらく硬直したが
我に返った途端、キュヒョンへの思いが溢れるだし、もう止まらなかった。
気がつくと、キュヒョンを抱きしめ、もつれながら仮眠用ベットへ倒れ込んだ。
「ヒョン・・・か、鍵・・・」
『そんなのいい。誰も来ない。』
キュヒョンの首筋に顔を埋めながら耳たぶを甘噛みしつつ、
手をシャツの下から滑り込ませ、胸の小さな突起の感触を指で確かめた。
「ダメだよ。ねぇ、鍵!」
身じろぎながらキュヒョンは意識を持って行かれる前に必死に叫んだ。
『動くなよ。そのままでいろよ。』
「わかってるよ・・・」
キュヒョンももう一瞬たりとも離れていたくなかったが、
鍵だけは・・・と必死だった。
鍵をかけたシウォンが白衣とシャツを脱ぎ捨てながら戻ってきた。
首には二人の愛の証である指輪がチェーンの先で揺れていた。
いつみても惚れ惚れするしなやかな肢体。
その肢体が覆いかぶさってくると、期待に胸を躍らせ
キュヒョンの口からは甘く切ない吐息が漏れた。