「へぇ~。ずいぶん楽しそうじゃねぇか。」
地の底から絞り出したような、低いけれど力強いヒチョルの声が響いた。
そこにいるもの、あるものすべてが氷ついたようにみんなの動きが止まった。
ウニョクの割れた腹筋に顔を寄せていたドンヘがそーっと顔をひねると
ヒチョルと目が合った。
「あっ、ヒチョ!えっと・・・お・・・かえり・・・」そう言って二ッ!っと引きつり笑いをして
見せたが、ヒチョルは口角を微かに上げ冷たく見つめたままだった。
「あっ!トゥギ先生~寂しかったぁ・・・あと・・・え・・・?」
ウニョクが目を輝かせてイトゥクを見ると、いつもはじけるような笑顔の先生は
ニコリともせず、チッと舌打ちして何かブツブツ言っていた。
「お前ら・・・ばっか野郎・・・」キュヒョンにはそう聞こえた。
この状況って・・・
ヤバくない?
4人がこう着する中、「ジョンウンさ~ん!!」とリョウクがはじけた様に
イェソンに駆け寄り首に手を回し飛びついた。
え・・・?リョウク・・・?
この状況わかってる?
「リョウガ~、ただいまぁ。って、なんであいつら裸なんだ?
大丈夫だったか?何もされてないか?」
「ううん、大丈夫。一緒に踊ったり、抱っこしてくれたり、おんぶしてくれたり・・・
オッパ達すっごいの~」
「え・・・?抱っこ?おんぶ?すごいって・・・リョ、リョウガァァァ」
イェソンが顔色を変え、ドンヘとウニョクをにらみつけた。
「え?」
「なに?」
酔って騒いでいた2人は自分たちの状況が非常にまずい立場だと
今さらながら気付き、ただみんなで盛り上がってただけだと
何が悪いんだと状況説明を始めたが、取り合ってはもらえなかった。
「話はこの後じっくり聞いてやるよ。」
「イタタタタ~、ヒチョ、痛いよぉ~」
ヒチョルがドンヘの耳を引っ張りながら先に部屋を出て行った。
その時、”お前こういう趣味があんのか”とイェソンに言いながら
キャンドルを手に取ってほくそ笑んだヒチョルと目が合っキュヒョンは
背筋に汗が垂れるのを感じながら”それどうするんですか”とも聞けず、
引きつった笑いを見せた。
「ヒョク。お前、半径一メートル以内、俺に近寄るの禁止な。」
「えー、トゥギ~、なんでだよぉ~。なに怒ってるんだよぉ~」
「怒ってねぇよ。ほら行くぞ!」
「トゥギ~」
「お前なぁ、他の奴に触らせてんじゃねぇよ。」
「ねぇ、ねぇそれヤキモチ?ねぇ、ヤキモチでしょ?」
「うっせーよ。ほら行くぞ!さわんじゃねぇよ。」
「トゥギ~、かわいい!もっとヤイてヤイて~
あっ、待ってよぉ~」
”え?トゥギ先生、ヒョクにべた惚れ?”ちょっと意外なパワーバランスに
珍しいものでも見たかのようにポカーンと口を開け2人を見送った。
「キュヒョン。シウォンはまだ戻れないんだ。多分今日はもう・・・」
イェソンがキュヒョンに声を掛けた。
「あ、は、はい・・・」
「大丈夫か?」
「え?えぇ、もちろん。」
寄り添うイェソンとリョウクを見ながら答えた言葉が少し震えていた。
ウソ。
大丈夫なんかじゃない・・・
寂しいよ。
シウォナ・・・
1時間後。
チョウミにお願いして適当に用意してもらった包みを手に、
キュヒョンはホテルを後にした。