「先生、いつも通り外来やってるってさ。」
様子を聞いてきてくれたウニョクがそう言って戻ってきた。
「そっか。ならいいんだ。」
キュヒョンはそう言って薬剤のチェックを続けた。
シウォンが帰ってから部屋に一人残ったキュヒョンは
結局一睡もしないまま出勤してきた。
シウォンからは何の連絡もないままだった。
病棟に寄らず、直接外来に出てしまったらしい。
みんなが何も騒いでないんだからちゃんと外来に出てるんだろけど、
やっぱり確かめずにはいられなかった。
「お前さ、先生と連絡取ってないのか?」
「ん?あぁ。まぁ.....」
「お前さ、今度はなにやったんだよ。」
「何にもしてないって。俺が悪いんじゃないって言ってるだろ?」
「ふ~ん.....悪くないねぇ.....」
ウニョクはそれ以上何も言わなかった。
............
「あっ、先生!」
ウニョクが指差す方を見ると、
シウォンがヒチョルとランチの最中だった。
(よかった。昼、たべれたんだ。)
お昼の時間、食堂はいつにもなく混雑していて、席が空いてなかった。
ランチのプレートを持った2人を見つけて、ヒチョルが手招きをしてくれた。
「おつかれさまです。ありがとうございます。」
ウニョクがそう言ってニッカリ笑いながらヒチョルの隣に腰掛けた。
キュヒョンはシウォンに目配せして隣に座ったが、いつものシウォンとは違う雰囲気に戸惑って言葉がでなかった。
「よー、坊主。イトゥクとよろしくやってるか?」
そういいながらウニョクの頭に手を乗せ、 くしゃくしゃっとした。
「えぇ。よろしくやってます。
っつか、先生が言うとなんか、隠微な香りがしますね。」
「ははは~。なんだそりゃ。お前こそ、幸せオーラ振りまいてんじゃねーよ!」
そう言って頭をこついた。
そんなやり取りを苦笑いでキュヒョンは眺めながらランチプレートのサラダを口に運んだ。
「シウォン先生、大丈夫ですか?」
「あぁ。昨日はすまなかったな。助かったよ。」
「いや、キュヒョンが、パニックっちゃてそっちが大変で。ナースにあるまじき失態。
ってまぁ、イトゥク先生があぁなったら俺、もっとパニクるし。」
「あぁ~、それ目に浮かぶなぁ。
キュヒョン。後で傷診せてみろ。
俺がべっぴんさんに直してやるからな!」
「別にいいですよ。これくらいの傷。なんともないから。」
「いや、シウォンが気にするからダメだ。胸に大きなキズ残した上に
顔にまで.....って、ずっと.....」
「え?」
「ヒチョ!黙れ」
シウォンがヒチョルを制した。
その声が思いの外キツかったのを自分で気にしたのか、
「悪い。ころからカンファだから。」
と言って席を立ってしまった。
「なんだよあいつ。まだ時間あるって言ってたのに。」
(なんでこうなるんだ.....)
キュヒョンは胸の奥がキリリと痛んだ。
「俺、行くね。」
「えっ?お前、まだ食ってないだろ?」
「もういいや。」
「おい!後でちゃんと医局に来いよ!」
ヒチョルが食堂の出口に向かうキュヒョンにそう声をかけた。
「しっかしあいつら、そーとー面倒くさいな。」
「いつもの事でしょ?」
「まぁな。シウォンのやつ、2、3日前はおっそろしい程上機嫌だったのに、
最後ぶっ倒れるまで自分を追い込みやがって。」
「先生、基本Mですからね。」
「今回もあいつの早合点から始まった見たいだしな~。」
「みたいですね。」
「まぁ、後でキュヒョンとは話してみるさ。思う心は同じなのに
それを現す方法と手段がな.....要はそこだろ?でも、それが一番やっかいだ。」
「さすが先生!二番目にかっこいい!」
「二番目?一番はトゥギか?」
「えぇ、もちろん!!宇宙一ですから!」
「うざいなぁ。お前。でも、キュヒョンに見習わせたいな、
そういうスーパーポジティブなとこなぁ。」
「ヒチョル先生。それ誉めてますよね。」
「バーカ!誉めてねーよ!」
そう言ってヒチョルはウニョクの頭をくしゃくしゃと撫で
高らかに笑いながら食堂を後にした。