ジレンマ -12- の派生
「先生、大好きですよ・・・」
昨日そう言って俺のこの腕の中で甘い吐息を漏らしていたのは、
本当に今、自分の目の前にいるこのキュヒョンだったのだろうか。
姿形は同じでもまったく違う人間じゃないかとシウォンは本気で思った。
昨晩夜勤だった病棟は緊急入院や急変などが相次ぎ
甘美な余韻に浸っている暇など確かに全くなかった。
それを労ってちょっと肩を抱いたら・・・
みぞおちに一発くらい、
「約束は?」
と蔑んだ目で見降ろされた。
確かに過剰なスキンシップは禁止だと言っていたが
ここまで割り切らなくても・・・
『過剰な』じゃない『適度な』スキンシップも禁止なのか?
シウォンは背を向けたキュヒョンにそう叫びたかった。
「先生、まだまだ甘いな・・・」
そう言いながら、
出勤してきたウニョクが首を左右に振りながら
気の毒そうにその横を通り過ぎた・・・