キュヒョンは朝から気分がすぐれなかった。
昨晩から何やら熱っぽく、身体に重りがくっついているかのようだった。
ちょっと横になりたくて、仮眠室のベットで横になっていた。
遠くで病棟のざわめきが聞こえる中、だんだん意識が薄れていく。
まただ。またあの感覚が襲ってきた。
「キュヒョン!キュヒョン!おい!大丈夫かキュヒョン!」
うなされていたキュヒョンにシウォンは声を掛けた。
起こされたキュヒョンはシウォンが目の前にいて一瞬混乱するが、
「先生、どうしてここに?」
「ここで仮眠取りながらお前を待ってようかと思ってきたら・・・」
シウォンの答えを待たずにキュヒョンは思わず泣き出した。
「おい、どうした?とにかく待ってろ。」
そう言うとシウォンは仮眠室から出て行った。
キュヒョンはベットに横になった。意識がまた遠のいた。
誰かが自分を呼んでる。
あっ、またあの香り・・・
俺の好きなあの香り・・・
見知らぬ部屋で目が覚めたキュヒョンは驚いて起き上がろうとしたが、
誰かがそれを制した。目の前にシウォンの優しい瞳があった。
おでこにはシウォンの大きな手。
状況は分からないけど、シウォンがいる。
キュヒョンはホッとした。
「大丈夫か?ものすごくうなされてたから・・・」
キュヒョンは何も言えなかった。
ただただ涙がこぼれて止まらない。
「ちょ、ちょ、ちょ、どーした?俺、何か気に障ること言ったか?」
キュヒョンはただ首を振った。
「まぁ、服は脱がしたけど、別に何もしてないよ・・・」
と掌を振りながら降参のポーズをした。
そんなシウォンの様子を見てますます泣けた。
今までウニョクの前だって、親の前だってこんなに泣いたことなかったのに。
自分でもどうしていいのかわからない。
そんなキュヒョンをシウォンは
「そうか、そうか・・・」
とただただ静かに見守っていた。
今から1時間前。
キュヒョンの携帯がなった。
心配したウニョクからだった。
「あっ、キョヒョ・・・あれ?シウォン先生?」
「あぁ、ウニョク。シウォンだよ。」
「あぁ、よかった・・・先生が一緒なら・・・あいつどうですか?」
「ひどくうなされてたけど、今は落ちつた」
「よかった・・・本当に良かった・・・先生がいれば安心だ。」
「ん?」
「俺、あいつがまだ事故のこと忘れてないのわかってたんだけど、
どうしてやることもできなくて・・・
ほんと、親友として申し訳なくて・・・
でも先生なら・・・」
「そういってくれてありがとう。」
「先生。あいつのこと頼みますね。
たぶんどうしていいか分からないだけで、あいつ先生のこと・・・」
「わかってるよ。ウニョク。大丈夫わかってるから。
様子を見にうちへおいで。
イトゥクに言っておくから連れてきてもらって。」
「ほんとですか?ありがとうございます!」
「君の大事な親友は俺がちゃんとついてるから安心して。何かあったら連絡するから。」
そう言って電話を切った後、ソファーに座り自分の掌をじっと見つめ
シウォンは物思いにふけった。
そして、何かを決したようで、天を仰ぎ十字を切った。