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「キュヒョンは決して自分からは放たないけれど人の目を引く
もともと
そこに艶っぽさが・・・
まぁ、女の子に夢中にでもなってるかと思って、あまり気にしてなかったんですが・・・
そうか。
あなただったんだ。」
チョウミにそう言われシウォンは思わず苦笑いした。
「『これはただ事じゃない。』としか言いようがないですよね?」
オーナー室を訪ねてきたシウォンにチョウミが思わず皮肉を言った。
「昨日は初対面にも関わらず失礼しました。
後、今朝の朝食。キュヒョン、喜んでいました。」
シウォンはそれには答えず通り一遍の挨拶をし、促されソファ-に座った。
チョウ ミは眉間にシワを寄せながら聞いてきた。
「それはどうも・・・で、キュヒョンとどうしてこういうことに?」
「直球ですね。」
「えぇ。お互い忙しい身ですからね。無駄に時間を使う必要がないように・・・」
「ですね・・・」
「で?どうして?」
「・・・彼を愛してる。そしてまた、彼も俺を愛してる。それだけじゃダメですか?」
チョウミをまっすぐ見つめシウォンが答えると、一瞬彼のこめかみに力が入った。
が、すぐそれを隠し少し目を細め少し口角を上げた。
「ダメって・・・いいも、ダメも・・・貴方ほどの方なら相手に事欠かないでしょう。
なのに全く・・・何でキュヒョナなんです?」
チョウミは手元の 雑誌を机の上に置き大きく息を吐いた。

『チェ・シウォン。』
この世界にいたら必ず一度は耳にする名前だ。
ボリョン・メディカルグループのCEOを父に持ち、
母親もまたファッション関係の会社のCEOを務め、
自身も医者として頭角を現し始め世界的権威の1人として
名を馳せるだろうと言われている人物。
東洋人としては長身な自分とさほど変わらぬ身長に鍛え抜かれた身体。
精悍な顔立ち。誰からみても完璧なスタイルだった。
その男が昨日、いきなり目の前に現れた。
しかも、溺愛してきたキュヒョンの想い人として。
最初は信じられなかった。
が、キュヒョンのあの様子からするとウニョクが言うように
キュヒョンにとってシウォンは心を開ける数少ない人間の1人なのは認めざる負えない
目の前の男は眉をあげ肩をすくめ少しおどけた。
その態度にイラついたがチョウミはそれを上手に隠した。
「キュヒョナは私の大事ないとこでして・・・小さいころからずっと
ミーミ、ミーミって・・・それはかわいくてかわいくて・・・
守ってきたんですよ。大事に。」
テーブルの上の雑誌に視線を置き、半ば独り言のように言いながら
もう一度目の前のシウォンを見た。
隙のない身のこなし、ソファーにただ座っているだけでもそこからは
育ちの良さが感じられ、それが一つも嫌味ではない。
この国でも有数な財閥に生まれたというバックボーンに加え、
自らは外科医として名声も持ち合わせたこの男からは少しもおごったところが見られない。
顔もスタイルも自分と比べて、何一つ引けを取らない。
噂以上だった。
キュヒョンには申し分の無い相手・・・
が、彼は男だ。
全くあいつは・・・よりによって、チェ・シウォンを相手に選ぶとは。
キュヒョンの事だから地位とか名誉とかそんな物に目が眩んだわけじゃないのもわかる。
認めざる負えないじゃないか。
ここにキュヒョンがいたらデコピンもんだな。
「・・・んしなんですよ。」
「え?」
沈黙を破ったのはシウォンだった。
「え?なんです?」
「天使なんですよ。キュヒョンは。」
「て、んし?」
シウォンが手のひらを上に両手を広げ、肩をすくめて見せた。
チョ ウミは思わず大声で笑った。
「よくもまぁ、そんな恥ずかしいことを言ってのけますね。」
「いや・・・本心だし、あなたにはわかってもらえるかと・・・」
「そうですね。それだけで十分ですね。」
「じゃぁ、この件は・・・俺は合格かな?」
「まぁ、一応。」
「一応?」
「えぇ、あの子は私にとってもかわいい天使なんでね。
わかってはいますが、癪に障ります。」
「癪に障る・・・いい響きですね。優越感を味わえる。」
そう言いながら立ち上がったシウォンがドアの方へ歩き始めた。
「別に、私の意思なんて気にはしませんよね?本当は。」
「えぇ、まぁ・・・
でも、キュヒョンが気にしてる以上無視はできない。」
「まぁ、そうでしょうね・・・」
ドアの前で一旦止まり握手を交わした。
「本当は知ってましたよね?私が誰なのか。」
チョウミが握手する手に力を入れた。
その手を力強く握り返し目を大きく見開き
「・・・もちろん。」
笑みを浮かべ答えるシウォン。
「やっぱりあなたは癪に障りますね。」
「やっぱりそれ、褒め言葉だ。」
お互いその言葉で充分だった。