偶然に重なった久しぶりの休みの日の朝。
俺は明け方に帰ってきたキュヒョンを起こさずにベッドを抜け出し、一人キッチンに向かい朝食の準備を始めた。
冷蔵庫から卵を二つ取り出し、熱したフライパンに割り落とし少ししてから水を入れ蓋を閉めた。
出来上がるまでの間、ホットサンドの食材の準備に取り掛かると後ろからフワッと抱きしめられて俺は包丁を置きコンロの火を止めた。
『...危ないだろ。怪我したら困る。』
そう言って少し距離をとって、俺は振り向いた。
『早くないか??』
そう聞くと正面からぎゅっと抱きしめられた。
『...だって、居ないから。』
『...。』
『...せっかくの揃ってお休みなのに。』
『...だからこうして朝食の準備をしてるんだろ。』
『...僕は兄さんと一緒に朝を迎えたかったんです。』
『...悪かったよ。』
そう言って俺は背中に手を回して、ポンポンと叩いた。
『ジョンウン兄さん。』
『ん??』
『...食べたら、デートに行きましょう。』
『寝なくて平気か??帰ってきたの朝だったろ??』
『...休みが重なるなんて、滅多に無いんですよ??デートしたいです。』
そう言われて俺はぎゅっと腕に力を入れた。
『...ありがとう。』
『こちらこそありがとうございます。』
そう言ってキュヒョンは体を離し、少し見つめ合った後で顔を近づけてきて唇が重なった。
『...キュヒョン。』
唇が離れた後、見つめて名前を呼べばキュヒョンは微笑んだ。
『何ですか??』
『...もう一回。』
そう言うとキュヒョンはいとおしそうにまた微笑んでくれた。
『...仰せのままに。』
そう言って再び重なった唇からは愛が伝わってきた。
それから名残惜しそうに唇が離れ、俺たちは額を合わせキュヒョンは幸せそうに笑った。
それを肌身で感じて幸せを噛み締められる嬉しさに俺は胸がいっぱいになった。
着替えてくると離れたキュヒョンの背中を見送り、出来上がった朝食を皿に盛りリビングに並べた時にふと窓から暖かな風が入ってきた。
『...春、か。』
そう呟きながら俺は今日のデートの行き先を勝手に決めてウキウキとした。
春の暖かな風が幸せをもたらしたのであろうか。
溢れる愛を抱きながら、これからもずっと。
他愛ない朝に、特別な約束を。
キミとオレだけの何気ないけど特別な一日に。
END