笑顔を見せるのは当然で、それを " 苦 "だと思ったことはない。
朝から出待ちのファンから綺麗にラッピングされたプレゼントを受け取り、夜も寒い中で待っていてくれているファンからまた受け取った。
何度も頭を下げて礼を言い、車に乗り込み俺は貰ったモノを見つめた。
「...寄るか??」
鏡越しでそう言われて俺は首を振った。
「会いたくないのか??」
『...俺、何も用意してないから。』
「あいつなら用意してるんじゃないか??」
『...。』
「まぁ、向こうから会いに来そうだけどな。」
『...困る。』
そう言うとクスッと笑われた。
『...なに。』
「...キュヒョンなら待ってそうだけどな。」
そう言われて俺はハッとなり、前のめりになった。
『急いで。』
「...はいはい。」
そう言ってマネージャーは急いでくれて、俺は礼もそこそこに車から降りた。
足早に自分の借りている家へと向かうと、扉の前で膝を抱えて座ってる人が居た。
近づいて側にしゃがみ、俺は手を伸ばして髪に触れた。
『...キュヒョン。』
そう呼ぶと視線が向き、目が合うとキュヒョンは微笑んだ。
『...来ちゃった。』
そう言われて俺はたまらず抱きしめた。
『...来ちゃったって。バカ。』
『おかえり、ジョンウンさん。』
『...いつから居たんだよ。』
『ついさっき。』
『...嘘つき。』
そう言って俺は体を離し、キュヒョンの腕を摩った。
『...こんなに冷たくなって。』
『ジョンウンさん。』
そう言いながら上着を脱いでキュヒョンに着せてやろうとすると、キュヒョンは俺の名を呼び手に袋を持たせてきた。
『... " Happy Valentine. "。』
『...っ..。』
『僕と出逢い、月日を重ね、愛してくれてありがとうございます。』
『...。』
『これからも僕を愛し、僕に愛させてください。』
『...っ..。』
返す言葉がすぐに出てこず考えていると、キュヒョンは携帯電話を見た。
『...間に合った。』
そう言って微笑み俺に携帯電話を見せてきた瞬間、日付が変わり胸が締め付けられた。
するとキュヒョンは立ち上がり俺に手を差し延べてきて、握ると引き上げられた。
『ジョンウンさんのこと困らせたくないから帰ります。』
『...。』
『どうしても会って直接渡したかったから。』
そう言ってキュヒョンは俺の手を離した。
『もう帰りますね。ジョンウンさん、寒いから中に入ってください。』
そう言ってキュヒョンが行こうとするのを手を握って引き止めた。
『...行くな。』
『...。』
『...電話してやるから。一緒に居ろ。』
そう言うとキュヒョンは微笑んだ。
『はい。』
そう言われて俺は恥ずかしくなり俯いて、手を繋いだまま鍵を開けて共に家の中に入った。
END.