何がというわけではないが、何かに追われている気がしてならない時がある。
積み重ねてきた時間は裏切らない。
そんなことにはとっくの間に気が付いてはいる。
それでもなんとなく、意識が一つに集中しない。
そのせいで普段はたいして飲まない酒を浴びるように飲んでしまった。
そのままの勢いとふとした思いつきで海へと向かいしゃがみこんでため息をつき、目を瞑ると頭の中に一人の男が思い浮かんだ。
そしてその場に寝転がり、しばらくすると気配を感じて目を開けてみると俺の顔を覗き込む男が居た。
『...今日は来れない日じゃなかったのか??』
『来てくれてうれしいなら、うれしい顔をしてほしいですね。』
そう言われて俺は起き上がり、体ごと向けるとため息をつかれた。
『飲めないのに、泥酔するまで飲むなんて。明日に響きますよ??』
『...。』
『大事な発表があるんですよね??なのに、あなたって人は。』
『...なぁ、キュヒョン。』
『...なんですか。急に真剣な顔して。』
『...お前、なんでそんなにタイミング良いの??』
『...質問の意味が分かりませんけど。』
『...こういう時、いつも側に居るよな。』
『...。』
『...なんで??』
そう聞くとキュヒョンは柔らかく微笑んだ。
『...分からないですか??』
『...。』
『...決まってるじゃないですか。あなたが好きだからです。』
『...。』
『...愛してるから、ジョンウンさんが悩んだり苦しんだりしてるのは耐えられない。側に居ることでそれが和らぐなら、それで十分です。』
『...お前、一途すぎ。』
『...あなただけですから。』
そう言われて俺はキュヒョンの胸に頭を寄せた。
『...キュヒョン。』
『はい。』
『...お前が隣に居ること。俺の最大の力だから。』
『...はい。』
『...変わらず側に居てくれ。』
『...ずっと居ます。』
そう言われて俺は離れてキュヒョンを見つめた。
『...なぁ、キュヒョン。』
『今度はなんですか??』
『...俺、お前のこと好きなのか??』
そう言うとキュヒョンはクスッと笑った。
『僕に聞かないでください。』
『...そうだよな。』
『...本当に可愛い人ですね、ジョンウンさんは。』
そう言ってキュヒョンは俺を抱きしめてきた。
『僕は変わらず好きでいますから。』
『...。』
『...ずっと愛してきましたから。』
『...恥ずかしい。』
『そんなところも好きです。』
そう言われて俺は顔から火が出そうだった。
『まぁ、地道に頑張ります。好きって実感してもらえるように。』
『...。』
『...だから、。急に頑張ったりしなくていいですからね??そのまま。』
『...ん。』
『...このまま隣に居させてくださいね。』
『...もちろん。』
そう言って俺は体を離してキュヒョンを見つめた。
『...キュヒョン。』
『はい。』
『...チュウ、するか??』
『...チュウって、本当に可愛い人。チュウなんてしていいんですか??』
『...分からない。でも、嫌じゃないと思う。』
『...どこまでも可愛い人ですね。』
『...試してみるか??』
『...喜んで。』
そう言ってキュヒョンは唇を重ねてきて、俺はそれを受け入れた。
夜空の星が俺たちを照らす。
ここが始まりなんだと思う。
俺の隣にキミが居る。
大切なキミが俺の隣に居てくれる。
END