ジョンスさんが帰ってからしばらくして、俺は帰る準備をした。
荷物を全て持ってから、俺は外に出る。
外はすっかり暗くなり、俺は駅へと足を進めた。
明るい光はどこまでも続いているように見え、俺はそんな中を歩き続けた。
路地を抜けて大きな広場に出ると、ダンスの練習をしてる人たちがたくさん居た。
俺はそんな姿は目に入らなかった。
しばらく歩き、もうすぐ駅に入る所で俺は立ち止まった。
耳に入ってくる歌と声。
俺はゆっくりと振り向いた。
そして、一歩ずつ聞こえる声に向かっていく。
- 僕にとって大切な記憶の中の幸福達
辛い時間の中でも とても暖かかった
希望は僕にとって眠らない夢
歌詞と声が、俺の中に入ってきた。
切ない声は俺の心を掴んだ。
いつもはスルーするはずなのに、俺は立ち止まった。
すると途中で目が合い、俺は反らすことが出来なかった。
- 数え切れないほど倒れふらついても
僕はこうして立っているじゃないか
僕の心は一つだけなのに
辛い時は君がこうして力になってくれる?
音が鳴り響き、終わると同時に頬に何かが伝った。
『お兄さん、泣いてる??』
そう聞かれて俺は否定出来なかった。
それどころか、涙が止まらなかった。
『お兄さん。』
そう言ってハンカチを差し出された。
俺はそれを受け取った。
『お兄さん、何かあったの??』
そう言われて俺は顔を上げた。
『まぁね。』
『そうだ。』
そう言って彼は袋から、クッキーを出した。
『これ、どうぞ。』
『俺に??』
『はい。今日はこれで帰るんで、あげます。』
そう言って彼は立ち上がった。
ケースにギターを入れて、彼は準備をしていた。
『それじゃ、さようなら。』
そう言って彼はニコッと笑い、人混みに消えていった。
不思議なオーラを持った彼に、俺は何故か熱くなった。
『...。』
俺はクッキーを見つめ、駅へと向かった。