先月のNHK‘試してガッテン’で『知覚過敏』のテーマで放送されていた回がありましたので、今回はそのことについて書きたいと思います。
放送内容を要約すると以下のようなものになります。
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知覚過敏は
① 歯周病が原因で歯茎が下がり、歯がしみるタイプ
② エナメル質が削れて歯がしみるタイプ
この2タイプに分けられる。
〈歯周病が原因で歯がしみる人〉は、
・歯磨きで歯垢をしっかり除去して、歯茎を下げない様にしましょう
・歯周病が酷い場合は歯周治療しましょう
〈歯が削れて凍みるタイプの人〉は、くいしばりと歯磨きが原因(くさび状欠損)なので、
・食事以外のときは上下の歯を接触させないようにしましょう
・噛み合わせの悪い場合は噛み合わせの治療をしましょう
・夜はマウスピースをしましょう
・力をあまりかけず、柔らかめの歯ブラシで歯磨きをしましょう。
といった内容でした(放送内容には続きがありますが、続きはまた次回)。
歯の表面はエナメル質といって人間の身体の中でもっとも堅い組織で覆われています。
エナメル質には神経は通っていません。
エナメル質の内側に象牙質があり、歯髄に通じるストローのような管が放射状にたくさん伸びています。歯髄は歯の真ん中に位置し、象牙細管(ストローみたい)を通して象牙質に栄養供給をしています。
象牙質が露出すると、神経に通じる象牙細管が露出することになるので‘
冷たいものが凍みる’
といった知覚過敏の症状がでてきます。
自然歯科では‘試してガッテン’でとりあげた後者のタイプ(くさび状欠損、アブフラクションとも言います)に限定せず、知覚過敏の原因は噛み合わせが大きく関与していると考えています。歯がガツガツ当たって骨に無理が来れば来歯周病になり、歯茎が下がって歯もしみてきます。
また、堅い歯やセラミックス、金属同士がガツガツと当たれば、歯髄が炎症を起こして虫歯でなくても痛くなったり凍みてきます。
噛み合わせが大事
ということですが、噛み合わせが悪くなる
‘原因’
はなんでしょう
噛み合わせが悪くなる原因は色々挙げられますが、原因の一つとして歯科治療が挙げられます。
顎の動きは顎関節(両耳の前方にあります。耳の前に手を当てて、口の開け閉めをすると動く部分があると思いますが、そこが顎関節です。)を支点にして、上下左右前後と様々な動きをしますが、長い年月をかけて微妙なバランスをとっています。
その微妙なバランスをとっていた所で、歯を削って人工の補綴物が入れば今までの自然な歯との微妙なバランスが変わってきて色々と問題を起こします。
ですから最小限の治療が一番だと思います。
また、放送内容ではくいしばらないようにマウスピースを薦めていましたが、自然歯科では逆にマウスピースはしないようにご説明しています。
診療で、普段夜間の歯ぎしり防止に他院で作ったマウスピースを入れている患者さんのお口の中を拝見する機会があります。歯のすり減り方が上下でパズルの凹凸の様にピッタリとあって見えるのに、実際に噛んだ状態で左右前後と顎を動かしても、上下の歯の凹凸が接触しなくなっているケースを多く見かけます。
これはどういうことかと言うと、
何年も駆けてゆっくりゆっくり調和してきた本来の歯の噛み合わせが、
『マウスピースを使用した途端に噛み合わせが変わってきてしまっている』という事です
あるいは入れた補綴物が原因とも言えるかもしれませんが・・・、マウスピースによって噛み合わせが悪くなることがあるということが言えると思います。GVBDOの山崎先生の御本にも‘マウスピースは人間破壊道具だ’という一文が載っています。
歯ぎしりは寝ている状態で心臓に無理のないようにして‘自分で噛み合わせの調整している’といえるので、一概に悪いことではない、意味のあることだとも言えます。
『知覚過敏』は歯磨きの‘仕方’が悪かったのではなく噛み合わせが大きく関係します。
噛み合わせは全身にも影響を与えますので、
安易に治療せず、
できるだけ自分の歯を大切に、
治す事よりも、
これ以上歯と身体のバランスを崩さないようにする事が大切だと思います
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました
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