昔、友人二人(女性)と3人で「書き物勉強会」というか相互批評みたいなことをやってまして。
で、その一環として「それぞれが出したお題でショート話を作る」という企画があって、こないだの「雪」と今回のこれはその時の作品です。
「雪」が自分の出したお題だったっけかな。
3人なので当然もう一個お題があってその作品もあるんですけど、それの自分のヤツは全然出来が良くないので世には出しませんw
まぁここに載せた2作品の出来が良いかどうかは、また別ですけどw
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ちなみに、この勉強会のときに書いた小説の「架空のサントラ」として作ったのが
こちらです。
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今回のこれは、「少女漫画の1話目」といった趣の(ファンタジック)コメディですね。
前回のショート同様、大昔に書いたものですのでディティールの古さ(ケータイだの着メロだのCDだの)は許してくんなまし。
時代的には2000年凸凹(鷲崎健風表現)辺りだと認識していただければ。
文字数的にはそうでもないですけど、ちょい長めです。
お暇な方は一読いただけますと幸いです。
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祈り
まただ、多分。
ここんとこ、この手の間違い─―というか勘違い─―がやたら多いらしい。特にこの日本で。
幸い俺は今回が初めてだが、それはこの仕事について日が浅い上に今まで俺の担当が日本じゃなかったからだろう。
先輩の話では、日本も昔はこうじゃなかったらしい。というより昔─―百二十年程前までらしい─―は日本方面の仕事は数える程しかなかったらしい。
それが、ある時を境に急に仕事が増えてきて、今では件数だけならヨーロッパにならぶ勢いらしい。もっとも、半分以上は今回のように間違いらしいが。
はぁー
日本の担当になっての初仕事がこれじゃ、先が思いやられるよ。
やっぱりあいつらが言ってたように俺は左遷させられたのかなあ。
あー先輩に間違いだった時の対処法を聞いとくんだった。配置換え一発目の仕事だ、なんて浮かれてたからなー。
どうしようかなあ。
仕事終らせないと帰れないしなあ。
おい、おまえ。
俺の目の前で、下品な言葉遣いで携帯に向かって唾飛ばしてるおまえ。
おまえのせいだぞ。
おまえが軽い気持ちで発した一言が、俺と俺の上司に多大な迷惑をかけてるんだぞ。分かってんのか?
分かるわけないな、今んとこは。
あー腹立つ。
携帯切ってやれ。ほらよっ。
「─―してたんだって、マジで。だか─―あれ?─―もしもし、もしもーし?何で切れるのー?信じらんなーい」
ざまあみろ。
「もう、どっからかけてんのよ、かずみってば」
相手のせいじゃねーよ。俺が切ったんだよ、バーカ。
「え、誰?」
おっとやばい。聞こえたか。
「やだー、誰かいるのー?」
いるよ、ここに。
上見ろ、上。ま、どうせ見えないけどな。
そう、おまえが今見てるところ。いるだろ、ダークグレイのスーツをスマートに着こなしてるかっこいい男が。おっと、日本じゃ『イケてる』って言うのか?
「えー、お化けー?」
おまえなあ、一人暮らししてるんだったらお化けより泥棒を心配しろよ。それとあれ、何だっけ? 最近多いって言う…ああ、ストーカー。そっちの方がお化けなんかより全然怖いだろうが。
大体、俺をお化けなんかと一緒にするな。俺はあんな烏合の衆と違ってちゃんと組織の一員として働いている。
まったく、冗談じゃないよ。わざわざやってきたのにお化け扱いされて……はあ
「あーん、やっぱ誰かいるー」
おーっと。まただ。やばいやばい。あんまり固執するとまずいな。
おいおい、クローゼットには誰もいないって。トイレにも。
あ、何だ?何の音だ?
「もしもし? あーかずみ。さっき切れちゃったじゃん。どっからかけてんのー?」
あー、着メロとかいうやつか。びっくりした。何かの警報かと思った。
それにしても、変だなー。着信音なんて普通でいいじゃん。日本人て何考えてんだろ。
「─―えー私じゃないよ。だってバリバリ電波来てるもん。─―うん、そう─―あーそーなの? なーんだ」
さてと。
どーしよっかなー。
取りあえず、やる事やれば帰れるんだけどなあ。
でも俺のポリシーに反するしなあ。
大体、本来これはうちの管轄じゃないんだし。
「─―何か声がして─―そう、お化け」
またか。
いい加減にしろよ。
悪魔とお化けを一緒にするな。
「ねー、怖いよねー、─―うん、今はしないけど─―」
畜生。何か物音立ててやれ。
何かないかなー。コップは割れたら危ないしなー。
あ、コンポの電源入れよう。CDかけてやれ。
「─―かもしれないけどさー、でもあれ、え? 何? やだー、やめてー」
おーびびっとる、びびっとる。
「ううん、勝手に鳴った。急に──ちょっとかんべんしてよー。やっぱいるよー」
だからいるって言ってんだろ。
それにしても何だ?この安っぽい音楽は。
このケースか?『SUPER EUROBEAT vol.83 』…は、はちじゅうさん?なんだそりゃ?
1年に2枚出ても四十年かかるぞ。5枚でも十五年以上だ。
すごいシリーズがあったもんだな。
「やだー、怖いー、もー」
そーか、怖いか。ざまあみろ。
あーもー止めよう。面白くない、この音楽。
エルビス・コステロとか持ってないのかよ、こいつ。あ、ニール・ヤングでもいいな。
「あーん、また勝手に止まったー。ちょっとー、何ー?」
だからそこにはいないって。ベッドの下にもだ。
そうそう、女の一人暮らしだから戸締まりは肝心だ。ついでに窓の鍵も締めな。
でも、意味ないぞ。ここにいるんだから。
「─―え、やだ、切らないで。切ったら、怖い」
おーし、切っちまえ、切っちまえ。
「ねえお願い、寝るまで切らないで」
何言ってんだ、おまえ。これから5時間も電話で喋るつもりか? それとももう寝るのか? 夜の8時前に。
邪魔くせー。切ってやれ。
「頼むから─―あ、なにー?もーやだー、なんで切れるのー?」
無駄だって。どこにもかかんないよ。
「なんでー? バリバリアンテナ立ってんじゃん。なんでつながんないのー?」
それはな、俺が繋げなくしてるからだ。
分かったか。
「あーん、神様ー」
あ?神様ぁ?
悪魔を呼び出しといてなんちゅー言い草だ。失礼にも程があるぞ。
あったま来た。説教だ。
おい。
「え?」
そこじゃない、上見ろ。
「何? なんなの─―きゃ!」
どーも。はじめまして。君達人間が呼ぶところの『悪─―
あ?お、おい。何気絶してんだよ。おい、起きろって。おーい。
はぁ。
やれやれ。
どうするかな。
近くに先輩がいないか探してくるかな。どーせしばらくは起きそうにもないし。
そーだ、そーしよ。アドバイスしてもらおう。
まったく……
・・・・
「…う…ん…」
お?気が付いたか?
全く、3時間も気絶してんなよ。
「…あれ? いつ寝たんだろ?」
…おまえなあ、どうしてそういう結論になるんだ?頭使えよ。
気絶だろ、気絶。
「かずみと電話しててー─―」
そうそう。
「何か変な声が聞こえてー─―」
そうそう。
「あれ? 全部ゆめ?」
だから、何でそうなるんだ?ちゃんと記憶辿れよ。
「変なゆめー。上見たら男の人が─―」
だから、夢じゃないって。どうでもいいけど、独り言の多い女だなあ。
「浮いてて─―あっ? い、いたーっ!」
あ、やばい。実体化してた。
あれ? という事はさっきからずっとか?
やっば。誰かに見られたかもしれない。
…いや、でも、誰も俺には気付いて無かったなあ。
まあいいや。
それにしても今度は気絶しないんだな。
「やだー、お化けー、あっちいってー」
お化けじゃないって言ってるだろ!
「あー、しゃべったー」
喋ってないだろ? 俺の声が耳から聞こえるか?
「なにー? わかんなーい。もーやだー早く消えて」
泣いても消えません、悪いけど。それに、お化けじゃありません。
「じゃーなによー?」
ちゃんと俺を見ろ。お化けに見えるか?それとな、語尾を延ばすな。イライラするんだよ。あとな、ちゃんと漢字を喋れ、漢字を。
「だってー、浮いてるもん」
宙に浮いてたらお化けか。ボキャブラリーのない奴だなあ。
「じゃーなんなのよ?」
悪魔、です。
「あーんやっぱりお化けだー」
……おまえ、いい加減にしろよ。悪魔だって言ってんのに何で「お化け」なんだ?
「だってー……」
だって何だ?え?
「やだー、こっち来ないでー」
やかましい。だって何だ?おまえは悪魔とお化けの区別も付かないのか?
「あーさわらないでっ!おねが─―」
うるさい。人の話を聞け。人じゃないけど。
いいか、お化けってのはな、この世に未練たっぷりの生き物が死んだ時になるんだ。分かったか?
「………」
おい、返事は? ちゃんと返事を─―
ありゃ?
…やれやれ、気絶したかと思えば今度は金縛りか。
まあいいや。話を聞かせるには丁度いい。
おい。
聞こえてるだろ?
聞こえてたら頭の中で返事をしろ。
〈…う…うん〉
よろしい。
〈…これって、超能力?〉
違う。ああ、おまえたちにとってはそうかもな。
だけど、これはおまえがテレパシーで喋ってる訳じゃないぞ。おまえが頭の中で言葉にした思いを、俺が読んでるだけだからな。間違っても自分に超能力があるなんて思うなよ。
〈………〉
おい、ちゃんと言葉にしろ。考えてるだけじゃ読めないんだよ。
〈金しばり、解いて〉
知らんよ。おまえが勝手になってるんだろ。
〈できないの?〉
出来るよ、別に悪魔じゃなくても。
〈じゃあ、して〉
やだね。話せるようになったらまた騒ぐし。
〈さわがないよー〉
語尾を延ばすなって言ってるだろ。それにな、金縛りなんてほっといたら解ける。
〈ほんとー?〉
こんな事、嘘ついたってしょうがないだろ。いいから俺の話を聞け。分かったか?
〈…うん〉
よし。いいか、まず言っとくけど、俺は悪魔、だ。お化けじゃない。
〈それってどう─―〉
うるさい。いいから人の話を聞け。人じゃないけど。
悪魔を見てお化けと言う奴に、その違いを説明しても分からないだろうが、俺たちや天使は─―まあ神さんもそうだけど─―生き物が死んでそうなる訳じゃない。
俺たちは最初から悪魔として産まれてくる。天使もな。あ、たまに転職する奴もいるけど。ここまでは分かるか?
〈…うん。なんとなく〉
なんとなく?…まあいいだろう。
魔界や天界の主な仕事は死人の管理だが─―
〈じゃあやっぱり─―〉
違ーう!おまえたちが良く見るお化けは俺たちの管理下には無い。
俺たちが管理してる死人はこの世にはやってこない。奴等は管理される事を嫌がってこの世に残っているか、それとも死んだ事に気付かないでいるかのどっちかだ。
〈死んだことに気付かないって、そんなことあるの?〉
あるよ。だから困るんだよ。そういう奴等には俺らの呼び掛けが聞こえないから。
〈え、でも今わたしに…〉
それはおまえが生きてるから。生きてる相手にはこうやって実体化すれば意思の疎通が出来るんだよ。詳しい原理は俺もよく分からないけどな。
アカデミーで習ったはずなんだけど、なんせもう随分前だからよ。
それに死んでちゃんと魔界に来た奴も問題ない。管理されるのを拒んだ奴もな。それはこっちでちゃんと手続きするから。
〈手続きって?〉
手続きは手続きだよ。死んだら役所に死亡届け出すだろ?それと一緒。いろいろ手続きがあんの。
〈ふーん…〉
分かってんのか、本当に?まあいいや。
でな、死んだ事が分からない奴等ってのは、この世とあの世のどっちにも属してない─―て、そんな事はどうでもいいんだ。話がずれてるじゃねーか。
〈しらない─―〉
「─―よっ!」
お、解けたか。
「あっ、しゃべれるー。あー、動けるー。よかったー」
あーそうね。良かったね。じゃ、続き話していいか?
「あ、うん、いいよ」
…おまえ、随分落ち着いてんな。怖くないの?さっきあんなに怖がってたのに。
「んー、ちょっと怖いけど、でも、そうでもない」
どっちだよ。訳分かんないな。
「いいの。続き話してよ」
あ、そう…じゃあ……えーと、どこまで話した?
「話がずれてるってとこ」
あーそうか。えーと、何だっけ?……あー、分かった分かった。
あのな、俺たちの仕事は死人の管理ともう一つ、願いを適えるっていうのがあるんだよ。
「え、それは神様じゃないの?」
まあ、神さんもそうだけど、俺たちもそうなの。願いの種類によって振り分けされるんだよ。正しい願いはあっち、ひねくれた願いはこっち、ていう風にな。
で、話は変わるが、おまえ一週間前に初詣に行っただろ。
「うん」
そん時、強力にお祈りしただろ。『克彦くんと相思相愛になれますように』って。
「えーなんで分かるのー?」
分かるんだよ。それが仕事なんだから。しただろ?
「したよ。でもー、神様にお願いしたよ」
それは関係ない。ふり分けは具体的な調査の後こっちでするから。
「調査? そんな事するの?」
当たり前だろ。何でもかんでも願いを聞いてたらきりが無いだろ。
「そーかなー」
そーなの。
で、おまえの願いを調査した結果、克彦君には彼女がいるな?
「…うん」
つまり、おまえの願いは、まず克彦君とその彼女が別れるっていうのが大前提だろ?
「当たりまえじゃん。二股なんてやだもん」
……
「なに? なんでだまってるの?」
…おまえの祈りが強力だったから俺たちのところまで届いたけど、おまえの願いは『克彦君が彼女と別れますように』と解釈されてこっちに回されたんだよ。
「それで?」
それで?それで、だと?
「うん」
……おまえ今そんなに克彦君の事、好きじゃないだろ。
「…そんな事ないよ。でも、うーん、もっといいなーって思う人はできた」
ほら。そーだろ。
その時の感情だけでな、簡単に祈るな。しかも強力に。
その度に俺たちがこの世に来なきゃなんないんだぞ。一瞬だけとはいえ、おまえらが強く願うから。
しかも仕事を終えなきゃ帰れないんだぞ、俺たちは。
1週間も持たない願いを強く祈るな。いい迷惑だ。
あ? 何怒ってんだ?
「じゃあ、かなえてよ。そうすれば帰れるんでしょ?」
あのなあ、俺たちの適える願いは『必要悪』に限定されてるんだよ。正当な願いではないけど、話の都合上致し方ないネガティブな願い。まあ汚れ仕事、だな。あっちを表の顔とすれば。
「必要じゃん。彼女と別れなきゃ克彦君と付き合えないもん」
じゃあ別れた彼女はどうなる?
「そんなの、知らないよ」
…おまえ、ふざけんなよ。おまえの願いは全然『必要悪』じゃないんだよ。おまえのは、ただのわがままなんだよ。
「でも、仕事終わんないと帰れないんでしょ」
…そ、それは、そうだけど…
「じゃあかなえて」
でもおまえ、今はもっと好きな人がいるんだろ? そっちと付き合えよ。
「だって、その人も彼女いるもん。だから、克彦君が彼女と別れるんなら克彦君でもいい」
でもいいって……
「早くやって」
…駄目だ、やっぱり先輩捜そう。こんな奴の願いなんて適えたくない。
「あ、ちょっとどこ行くの? ちょっと、待ってよー。待ってってばー。かなえ─―」
