『金賞よりも大切なこと』読みました。
高校生吹奏楽コンクール常勝校 市立柏高等学校吹奏楽部(通称:いちかし)の日々の練習やコンクールでの様子を通して、「教育」というものを伝えています。
それは、この「いちかし」の指導者である石田修一氏の単なる音楽の指導法ではなく教育哲学そのものが随所に渡って語られています。
むしろ、指導者として教育を行ううえで、石田氏にとってはたまたま音楽が身近なもので都合がよかったと言えるのかも知れません。
コンクール常勝校とあって、「いちかし」での石田氏の音楽指導は、いわゆる"近頃の若いモン"なら逃げ出したくなるような厳格なもので、一切の妥協を許しません。
しかし、総勢200人にものぼる部員は幾度となく壁にぶつかりながらも、その高いハードルを越えていきます。
授業前の朝練に始まり、夜は遅い時は22時頃まで。
それだけでなく、土・日もコンクールや演奏会、または校内での練習。
青春を謳歌するはずの高校3年間の全てを吹奏楽に捧げるのです。
そんな一途な高校生の成長の裏側を垣間見ると、ホロッときてしまうような場面もしばしばあります。
何より感じたのは、生徒が石田氏の指導に従い、求められる高いレベルに必死について行こうとする姿はもはや信仰に程近いということです。
「先生の言う通りにやればできるようになる」。
ある種自分の意見や感情を捨て、愚直なまでに信じ切っているのです。
正直、ショックでした…。
教わったことを素直に、何の疑いも持たずに実行することは簡単なようで難しいことだと思います。
いろんな邪念や言い訳、怠惰な面が邪魔をして足踏みしている自分にヘコみました。
著者である山崎正彦氏は、取材を重ねるなかで、彼ら(部員たち)はこの先体験することのできないであろう貴重な3年間を過ごしている。
そしてこの3年間で得た経験は、演奏技術の向上とは比べものにならないほどの価値であり、ひとりの人間としての成長を大きく促していると語っています。
人生の中で、「この人!!」と思えるような出会いってなかなかないと思います。
そんな出会いを高校生にして得られるのは羨ましく思いますが、それはきっと前向きに生きてきた彼らにとっては必然なんでしょうね。
いやはや、おなかの周りに分厚いものがつき始めたこの年頃、高校生に負けてられません。