昨年の12月にふとしたご縁からメールをいただいたジン・ホワ・ムーンさん。

 

 

(昨年)11月から今年の2月末まで、東京文京区本郷に滞在しているが、その間に東京で額装を習いたいとメールをいただきました。

韓国語は出来ないので、やり取りは英語で始めましたが、メールの文章からはとても親しみのある暖かい雰囲気を感じました。

 

2月末に韓国に帰国されるまで、なるべくたくさんの額装を学びたいということで、1月初めからアトリエに来ていただくことにしました。

平日はお仕事なので、毎週土曜日か日曜日に額装をすることになり、ジンさんお一人での週末額装教室が始まりました。

 

東京ではホテル住まいで、しかも週日は朝から夜まで仕事なので、マット紙を買ったり、カットしたりの準備は難しいことから、

予め、額装したい絵やカードの写真とサイズを知らせていただいて、材料はすべて私が準備することにしました。

 

最初にこちらに来てくださった初対面の印象は、30歳くらいのキャリアウーマン、という印象で、

明るく気さくな方でした。

 

初めての回では、ジン・ホワさんはドキュモン(額装する絵やカード)も何一つ持ってこられなかったので、

こちらにあるものの中から選んでいただき、2023年のクリスティーヌ先生の講習会での初心者向けのデザインで額装していただきました。

このデザインはとても易しいのですが、出来上がりは素晴らしくエレガントだからです。

初めての額装で、ぜひ満足していただきたかったので選んだデザインです。

 

 

 

 

ジン・ホワさんの初めての額装作品です。

紙で作るブルーのリボンをとても楽しそうに作っていた姿が、

今も懐かしいです。

 

 

英語での説明や会話に苦労はしない、と思い込んでいましたが、

額装単語はフランス語でしか言えず、初日はお伝えするのに苦労しました。

これほど英語が出てこないとは、とびっくりするやら情けないやら・・・。

昔は自信があったものの、使っていないと知らない間に使い物にならなくなっていくものだと思い知りました。

 

それで、2回目に備えて、英語での額装説明の言い回しを、あれこれ考えてノートにメモをしておきました。

 

額装する間は二人だけなので、お互いのことをいろいろ話しましたが、聞きたいことは十分に聞けず、

話したいことも充分に伝えられず、もどかしい思いでした。

それでも、二人で一緒に手を動かしながら、つたない英語ながらも話をするのは楽しく、

何度も何度も一緒にお互いのことを知ってびっくりしたり、笑いあったりしました。

 

例えば、ジンさんのことを30歳くらいのキャリアウーマンと思い込んでいた私が、

「ご結婚はしているの?」と聞いたとき(こういう個人的なことも聞ける雰囲気になっていたので)、

ジンさんは「もちろん!」と笑いながら「子供も二人いる。」と言ったのです。

びっくりした私は、「子供はおいくつ?まだ小さいのでは?」と聞くと、

また大笑いして「25歳と22歳」と言うのです!

あとはもう爆笑の嵐です。

 

額装の回を重ねて話すうちに、ジンさんはソウルにご家族とお住まいで、東京には夫と一緒に来ていること、

夫婦そろって医師で、夫はソウルのハンヤン大学病院で、肝臓が専門の教授、ジンさんは小児科医で癲癇が専門の助教授、

ということなどがわかってきました。

そして週末には、1日は額装、もう1日は夫婦そろって箱根や京都、神戸などを旅行していると話してくれました。

 

 

 

 

 

ジンさんの2作品目です。

ポストカードは箱根の美術館で見つけて買ってきたものだそうです。

 

旅先で素敵なカードを見つけると、2枚買って、

いつも1枚を私に分けてくれました。

 

山茶花のような花の下で伏せている白い犬の絵は、

前本利彦さんの絵で、箱根の成川美術館で買われたそうです。

 

ジンさんは繊細なデザイン感覚を持っていて、

額装初心者ながら、さまざまなアイデアを思いつく人でした。

 

この時も、犬のまわりに散っている白い花びらをゴルジュ(絵のまわりの黄土色の枠)に

散らしたい、と言って、

「銀座の伊東屋(額装材料を売っているお店はどこか、と聞かれて私が真っ先に教えたところです。)で、

白い花の造花を買って来る。」と言いました。

 

伊東屋の8階で売っている「造花」がどんなものかよく知っている私は、

「買ってきた造花はこの額装に合わないから、私が作っておく。」と約束しました。

 

ハート型に抜いた白の紙を半分に折っただけの簡単なアクセサリですが、

この絵にはとてもよく合って、二人で喜びました。

 

 

 

 

 

 

 

ジンさんの3作品目です。

この絵のカードは神戸旅行でたまたま入ったお店で見つけたそうです。

 

神戸からのジンさんのメールには、

「とても素敵な絵のカードを見つけたから、3作目はそれで額装したい」

とありました。

 

絵の画像とサイズを送ってもらい、さっそくデザインを決めてマット紙を準備しました。

 

絵を長方形の窓に納め、その外側に楕円の金色の窓を設けると、

 

次の回にジンさんはかなり巨大な赤の薔薇の造花を買って持ってきました。

楕円の金に沿って大きな薔薇の造花を置いて見るまでもなく、

「大きすぎるし、雰囲気が合わない」ということがジンさんにも一目瞭然で、

この時も「私がいいのを作っておくから」と請負いました。

 

この薔薇は、梅の花型にくり抜いたものを、2枚重ねて、

薔薇の花に見えるよう、花びらの端をカーブさせました。

絵に合わせて茶色の細い葉も用意しておきました。

 

この薔薇と茶色の葉を、楕円の金に下に規則的に並べてジンさんに見せると、

ジンさんは「もっと自然に、ランダムに置きたい」といろいろ試しながら薔薇と葉を

貼っていきました。

それから、金色のアクセサリも加えたい、と言って、

金紙もカットして加えていきました。

確かに、絵を良く見ると、金色の模様があります。

 

出来上がりは予想以上のものになりました。

繊細で夢のような美しさです。

 

 

白い犬の額装と、赤い薔薇のある楕円の額装をインスタグラムにアップした時は、

お褒めの言葉がたくさんのコメントを、フランスからもいただきました。

 

 

ジンさんは夫のウオンさんと一緒に2月27日にソウルへと帰って行きましたが、

その前に4人(それぞれの夫も一緒に)で食事会をしよう、ということになり、

たのしい夕べを送ることができました。

 

いまもその日の写真の中のジンさんを見ると、

懐かしさと親しみの気持ちがあふれてきましす。