香水売り場の必須アイテムであるムエット(試香紙)。
ムエットとはフランス語のmouilletteに由来する呼び名で、本来は細長い棒状の紙で、
香水を振りかけて香りを確かめるのに使われていますよね。
大きなパルファン(香水)のセレクトショップに入ると、鉛筆立てのようなガラス瓶にたくさんの棒状の紙が立てられています。
これを一本手に取って、お目当ての香水の香りを確かめるのです。
このムエット、デパートや空港の免税店などの各メーカーの香水売り場では、メーカーがそれぞれにデザインした
とてもおしゃれなカードになって置かれています。
しかも、クリスマスシーズンなどにあたらしい香りが登場するたびに、新しいムエットがお目見えします。
子供のころ、母や叔母の裁縫道具のそばに現れるきれいなレースや布の端切れをもらっては、
何に使うあてもなく、ただ「きれい」という理由だけで大切にしまっておいたように、
デパートや免税店でもらったムエットは1枚も捨てずに箱にしまってあります。
箱を開けると、実際に香水を振りかけてもらって香りを確かめたものもあるので、とても良い香りがします。
箱を開けた途端に立ち上る香りも「宝物」の魅力を上げています。
ディオールの香水のためのムエット
サンローランの香水のムエット
CHANELの香水のムエット
デザイナーたちが、新しい香りのために趣向を凝らして作ったムエットは、細かなルリエフ(浮彫模様)が入っていたり、
金や銀の小さなドットや星が散らしてあったり、眺めていて飽きることがありません。
どれも名刺ほどの小さいものなので、これまで「額装してみよう」とは思ってもみませんでしたが、
ふと、いくつか並べてみたら面白い作品になるのでは、と思いつき、
4枚を選んで額装してみました。
4枚を選んだ時には、「きっと素敵な作品になる!」とワクワクしながらデザインし、せっせとデザイン通りに制作してみましたが、上のように額縁に納めてみると何となく、わくわく感がしぼんでしまったような、光が消えてしまったような、
妙な「失望感」をすこし味わいました。
どうしてでしょう?
しばらく放っておきましたが、作品が小さすぎるのと、黒のフレームが目立ちすぎている、と思い、
思い切って、白の化粧紙を貼ったベースのマット紙を、4つのカードを入れたパヴェ(台座)から、
気を付けながら引き剝がしました。ベリべりと。
そして、ベースを、縦・横とも4㎝大きく採って作り直しました。
ベースのマット紙のサイズを縦・横とも4㎝広くしたら最初のイメージに近づきました。
やはり周りの空間採りは難しいと再認識させられた次第です。
実物大のデザイン画を描いた時点では、「狭い」と感じられませんでしたが、
立体にしてみると「とても狭い」と分かったのです。
ディオールのPOISONのカードの細く光っているピンクがきれいなので、
この光るピンクをどこかに入れようと苦心しました。
どこに入れても目立ちすぎて、白と黒のバランスを崩すので難しく、
結局、黒の紙のフレーミングの外側に、0.5㎜の幅にカットして
光るピンクを入れてみました。
0.5ミリ幅でもすごく目立っています。
でも入れないと地味すぎる気がしたので、入れることにしました。
DMハガキが、LINEやメールでのお知らせにとって代わられている中で、
ムエットは、紙の広告媒体としてまだまだ健在であってもらいたいです。