役者をやってない人間のほうが面白い。
純粋に生きているからこそ自分にはない悩みや生きる意味を持ち、今日を生きる。
そんな彼らに魅力を感じる。人生という波に身を任せて、自由に生きている彼らに。
今日バイト先で、来年には就職するとか、彼女とどこ行くとか些細な事を話している先輩達が、すごく輝いてみえる。
彼らを見ていると自分も生きている感じがする。純粋に生きていたあの頃に戻った気がして。
この業界に入る前では生きていると実感できた。無意識に実感していたという方がしっくり来る。
でもそんな日々は一瞬にして過ぎ去っていた。
自分で安定した未来を捨て、青春という宝物を捨て中二からこの業界に入った。
学生にしては普通ではない日々を過ごしていると人間が生きていると実感できなくなった。
高1に大阪に出たときくらいからだ。気づくと世界に自分一人しか立っていなかった。
そんな日々が今も続いている。自分ははっきりしているのに人の顔や景色にうっすらと靄がかかっていて、夢の中にいるような感覚がある。怖い。隣に凶器をもった孤独が自分に常にぴったりついて立っている。離れない。
学校に行こうが、友達と遊ぼうが、そいつが消えることはなかった。これを書いている今でもすぐ隣りにいる。
いつになったらこいつは旅に出るのだろう。いつになったら心の底から生きていると叫べるのだろう。
一本道なのに迷ってしまう。正直自分が十年後生きている未来が想像つかない。
でも生きよう、悲しまてしまう人がいるから。頑張ろう、中二で役者をすると父に言ったあの日から自分だけの夢ではないのだから。沢山の人々の期待を背負っている。埋もれてしまってわかりにくいけど芝居が好きだという気持ちに変わりはない。それだけは胸を張って言える。だからこそ立ち上がろう、どんなに辛くとも毎晩うなされようとも目指した意味を、支えてくれた人たちの希望を背負い、虚勢を張り、血反吐を吐きながら何糞という武器を持ち挑み続けよう。大丈夫、生きてたらどうにでもなる。