練習も中盤に差し掛かったとき、顧問の先生がやってきた。
この先生、学生時代にアメフトをやっていて、すごい体つき。
某神奈川の大学がアメフト日本一になったときのキャプテンで、
某神奈川の大学では、伝説の人である。
体育館の隅で大の字に倒れている澤下さんを見て、
キャプテンの中丸さんに
「おーい、中丸、澤下は何で寝てるんだ?」と聞いた。
中丸さんが顧問のところへ行き、事情を説明した。
すると、私が呼ばれた。
「やばい。これは絶対に怒られる。半殺しにあう」と思って、恐る恐る行くと
「バケツに水を持って来い」という。
言われたとおりにバケツに水を汲んで持っていくと
バシャーッと澤下さんにかけた。
澤下さんは「ヒューッ」っと声を出して目が覚めた。
そして「練習中に寝てるとは、何事か!」とコンコンと怒られているのを
私は、水浸しの体育館の床を雑巾で拭きながら聞いていた。
そして、何事もなかったように澤下さんは練習に参加した。
私は澤下さんの動きがいつもより俊敏なのを見逃さなかった。
いま思えば、気絶している者は放っておくし、
バケツで水をかけるし、
私は、とんでもない先輩と顧問に育てられたものである。
よくよく聞くと、澤下さんの気絶は2回目で
以前は、調子にのって、ダイナマイトキッドばりの
フライングヘッドパット(飛び込み型頭突き)をして自爆し
やはり水をかけられて復活したそうである。
不死身だ。
おしまい