あっちゃん、今日は誕生日だね。
祝う事の出来なかった13歳の誕生日からもう20年。
『おめでとう』と言っても『ありがとう』が返ってこない、一人で祝う誕生日もこれで21回目。
まだ、私の傍に居てくれてるのかな。
輪廻があるなら、もう他の誰かとして生まれてるのかな。
一緒に祝えたのは、たった2回だったのに。
最後に祝った時は、卒業式を目前に色々話したよね。
卒業制作の木製のオルゴール作りで、彫刻刀で指切った話で心配させちゃったっけ。
本当、かすり傷程度だったのに、あんなに心配してくれたのが嬉しくて、傷は浅かったって言えなかった。
卒業式の言葉で、私が一番良い台詞貰えた事に『失敗したら一生の思い出だな』って笑われた。
完璧に言えたけど、あっちゃんの一言であの瞬間は今でもちゃんと残ってる大切な思い出。
日常の、何でもない会話も一つ一つが幸せだった。
笑った声が今でも耳に残ってるけど、あの頃より鮮明じゃなくなってきた。
このまま消えちゃうのかなって思ったら、怖くて泣けてきた。
あっちゃん、天国って本当にあるの?神様って本当に居るの?
貴方が見てきた私の22年は、どう映ってるのかな。
…逢えるなら、聞いてみたいな。
子供の頃見た映画で、自殺で命を絶った人間は木に生まれ変わるって言ってた。
けど、あっちゃんは木になんてなってない気がする。
…私が、此の地に縛り付けてるから。
見えなくても声が聞こえなくても、『ずっと傍に居て守ってやる』って約束…無理矢理守らせてる。
まだ、解放してあげられなくてごめんね。
誕生日おめでとう。
また来年も、祝う事を許して下さい。